債務整理Q&A(その3)
Q15.債務整理をすると住宅ローンは組めなくなりますか?
債務整理をすると信用情報機関に事故情報などが登録されるため、一定期間は新たに住宅ローンを組むことが難しくなります。
ただし、将来にわたって住宅ローンを組めなくなるわけではありません。信用情報から事故情報が削除された後は、収入や勤務状況、頭金、他の借入れなどをもとに改めて審査されることになります。
Q16.奨学金も債務整理の対象になりますか?
奨学金も債務整理の対象となります。
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金についても、自己破産や個人再生をする場合には、原則として他の借金と同様に手続の対象となります。
ただし、奨学金について連帯保証人や保証人が付いている場合には注意が必要です。本人が自己破産をして免責を受けても、保証人等の支払義務までなくなるわけではありません。また、個人再生によって本人の返済額が減額されても、その効果は原則として保証人等には及びません。そのため、本人が自己破産や個人再生をすると、保証人等に残額の支払いが請求される可能性があります。
これに対して、任意整理では、整理する債権者を選ぶことができます。
そのため、例えば、
「消費者金融やクレジットカードの債務については任意整理をする一方、奨学金については任意整理の対象から外し、これまでどおり返済を続ける」
という方法をとることも可能です。
特に、親などが奨学金の連帯保証人・保証人になっており、保証人への請求を避けたい場合には、奨学金を任意整理の対象から外すことが一つの選択肢になります。
ただし、奨学金を除外して他の借金だけを任意整理しても、毎月の返済を継続できるだけの収入がなければ、任意整理そのものが適切とはいえません。その場合には、保証人への影響も考慮しながら、個人再生や自己破産を含めて検討する必要があります。
また、日本学生支援機構の奨学金については、収入の減少など一定の場合に、減額返還制度や返還期限猶予制度を利用できることがあります。したがって、奨学金については任意整理から除外したうえでこれらの制度を利用し、その他の借金について任意整理するという方法も検討できます。
したがって、奨学金がある場合には、単に「債務整理できるか」だけではなく、①人的保証か機関保証か、②保証人への影響を避ける必要があるか、③奨学金を除外しても他の債務を返済できるか、④JASSOの返還支援制度を利用できないかを確認したうえで、債務整理の方法を選択することが重要です。
Q17.税金や社会保険料も債務整理で減らせますか?
結論として、税金や一定の社会保険料は、自己破産をしても原則として免除されません。
自己破産では、免責許可決定が確定すると、消費者金融、銀行、クレジットカードなどの通常の借金については原則として支払義務を免れます。しかし、破産法253条1項1号は「租税等の請求権」を非免責債権としているため、税金などについては免責の効果が及びません。
例えば、次のようなものが問題になります。
・所得税、住民税、固定資産税、自動車税などの税金
・国民健康保険料(税)
・国民年金保険料
・一定の社会保険料
したがって、例えば「消費者金融などの借金400万円+滞納税金100万円」がある人が自己破産して免責を受けたとしても、400万円の借金については原則として支払義務を免れる一方、100万円の税金については基本的に支払義務が残るということになります。
個人再生の場合も基本的な考え方は同じです。消費者金融やカード会社などに対する一般の借金は、再生計画によって大幅に減額される可能性がありますが、税金などを通常の再生債権と同じように減額して分割返済することはできません。民事再生法上も租税等は一般の再生債権とは異なる取扱いを受けます。
ここで重要なのは、「免除・減額されない」ことと「必ず一括で支払わなければならない」ことは別問題だという点です。
例えば国税については、一括納付によって生活の維持や事業の継続が困難になる場合など、一定の要件を満たせば「換価の猶予」や「納税の猶予」が認められる場合があります。原則として1年以内の猶予が認められ、事情によってはさらに延長される場合もあります。また、猶予期間中は延滞税の全部または一部が軽減・免除され、差押えや財産の換価が猶予される場合があります。
そのため、実務上は、税金以外の借金を債務整理することによって、税金を支払うための原資を確保するという考え方も重要です。
例えば、毎月の収入から、
消費者金融・カード会社への返済 10万円
滞納税金の支払い 3万円
をしている人の場合、自己破産によって一般の借金の返済義務を免れることができれば、それまで借金返済に充てていた部分を、生活費や滞納税金の支払いに回せる可能性があります。
したがって、多額の税金を滞納しているから自己破産をしても意味がない、ということにはなりません。むしろ、税金以外の債務を整理したうえで、税務署や市区町村などと税金の支払方法について相談することが有効な場合があります。
なお、税金を滞納したまま放置すると、延滞税が発生するだけでなく、預貯金や給与、不動産などについて差押えなどの滞納処分を受ける可能性があります。国税庁も、納期限までに納付できない場合には、所轄税務署の徴収担当に相談するよう案内しています。
Q18.友人や親族からの借金も債務整理の対象になりますか?
友人や親族から借りたお金も、消費者金融や銀行からの借金と同様に債務整理の対象となります。
特に自己破産や個人再生では、「親族だから迷惑をかけたくない」という理由で、その借金だけを手続から除外することは原則としてできません。
また、自己破産などを考えている状況で、親族や友人にだけ優先して返済することにも注意が必要です。
例えば、消費者金融やカード会社への返済ができなくなっているにもかかわらず、「親には迷惑をかけたくない」と考えて、親から借りた100万円だけを先に返してしまうようなケースです。
破産手続では、原則として債権者を公平に取り扱うことが求められています。そのため、一部の債権者にだけ優先的に返済する行為は、いわゆる「偏頗弁済(へんぱべんさい)」として問題になることがあります。
具体的には、事情によっては、破産管財人から返済を受けた親族などに対して、そのお金を破産財団へ返すよう求められることがあります(否認権の行使)。また、特定の債権者に特別の利益を与える目的などで行った返済については、免責不許可事由として問題となる可能性もあります。
個人再生の場合にも、一部の債権者だけに返済したことが、清算価値の計算などに影響し、結果として再生計画で支払わなければならない金額が増えることがあります。
したがって、自己破産や個人再生を検討している場合には、「親族への借金だから先に返しておこう」と自己判断で返済するのではなく、返済する前に弁護士へ相談することが重要です。

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