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債務整理事案での面談の必要性

大手の金融業者が日弁連へ申入をしたとのこと。
 ↓↓↓
https://news.yahoo.co.jp/articles/bc172dcdc667205ad12b339f28295bab9f17adaa

確かに、当事務所へご相談に来られる方の中には
大手事務所にいったんは債務整理の委任をしながら、
いろいろな理由でこれを打ち切った人が
しばしば来られる。

その理由はいくつか見られるが
その中には確かに実際に弁護士が面談することなく
ネットや書面でのやりとりだけで受任している場合も
あるようだ。

また、それとは別に
そう言った事務所は法テラスの利用を扱っていないため
高額の着手金等の支払いが完了するまでは
手続を進めてもらえず、また着手金が分割で支払えなくなって
連絡が取れない状態に陥ってしまった人もいるようである。

その結果、
債務者と連絡が不十分となった結果
やむなく当事務所にたどり着くケースも見受けられる。

最近では
そう言った大手事務所から見捨てられた?人の
受け皿に当事務所がなっているかのような
印象も否定できない。

債務整理等を大々的に宣伝している事務所は
それだけ広告費がかさんでおり、また多くの事務員を抱えているため
人件費もかかっていることから、低コストでの債務整理は難しい。

当事務所の場合、
・債務整理(破産等も含む)の依頼を受けるには必ず
 弁護士自身が直接本人と面談する。
・収入等の少ない人については法テラス利用を積極的に
 進める。
・(法テラス利用ができない人で)着手金分割の方に
 ついては,申立手続に進むまで何度も面談を行う。
と言うかたちで債務整理を進めているが、このようなやり方では
多数の事件処理をすることはできないし、弁護士としても
コスト的にも能率が良いわけでもない。

それでも、当事務所がこの方式を続けるのは
弁護士自身の仕事として、債務に苦しんでいる人が
喜ぶ顔を直接見たいからに他ならない。

もちろん、相談者の中には,どう考えても
支払継続できないにもかかわらず、
「破産は嫌だ,債務整理をしたい」と希望する
人もいる。
そういう人には厳しい意見を言わざるを得ないこともある。
その結果、怒って帰る人もいた。

しかしそれでも実際に面談することで
最終的にその人にとって最善の解決ができるように
することを常に考えているのである。

 カテゴリー : 一般, 法律

令和6年のゴールデンウイークの執務状況

当事務所のゴールデンウイークの執務状況については以下のとおりです。

 

4月27日(土) お休みさせていただきます。

4月28日(日) 午後1時から午後5時まで

         (但し相談予約申込があれば左記時間外も調整いたします。)

4月29日(月) 同上

4月30日(火) 通常どおり営業します。

5月1日(水)  通常どおり営業します。

5月2日(木)  通常どおり営業します。

5月3日(金)  午後1時から午後5時まで

         (但し相談予約申込があれば左記時間外も調整いたします。)

5月4日(土)  同上

5月5日(日)  同上

5月6日(月)  同上

※5月3日から6日までは、ご相談の予約状況その他により、お休みさせていただくことがあります。

 

以上よろしくお願い申し上げます。

 

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令和4年度司法試験民事系1(民法)解答例

問題文はこちら↓

https://www.moj.go.jp/content/001371990.pdf

 

【解答例】
第1 設問1(1)について
1 まず、AがCの請求を拒むことができる根拠として、Bに登記手続に

  必要な書類を交付したのは、抵当権抹消に必要と言われたからに過

  ぎず、Bへ甲土地を売却する契約をしたことはなく、よって甲土地の所

  有権はAからBに移転していないと主張することが考えられる。
2 これに対してCからは、AはBに対して抵当権抹消の権限を与えた

  ことから、これに基づいてなされた甲土地の所有権移転登記を信頼

  したことにより保護されないか。
(1)まず、AはBとの間で虚偽表示をしたわけではないので、Cは

   94条2項による保護は受けられない。しかし、真の権利者が

   外形の作出に帰責性ある場合に外形を信頼した者を保護すべき

   であり、そのような場合には94条2項や110条の類推適用

   により保護すべきである(権利外観法理)。
(2)Aは甲土地の売却を考えていたところ、Bに所有権移転登記

   手続に必要な書類等の交付をした結果、Bへの虚偽の所有権移転

   登記へ作出に寄与していることから、Aに外形作出への帰責性があり、

   Cがかかる外形を信頼するに正当な理由があれば94条2項、

   110条の法意による保護を受けうると解される。
(3)以上を前提にCが保護されるかを検討する。
 ア まず、Aはこれに対し、抵当権の抹消登記手続を委託したBの言葉

   を信じ、所有権移転登記手続に必要な書類一式を交付してしまった

   ものであるが、これは不動産取引経験のないAが、不動産業に携わる

   Bに騙されたことによる。またBはAが契約①の契約を偽造し、わずか

   15日の間に甲土地の移転登記手続と契約②の締結を行っている。

   このことからすれば、Aの帰責性は積極的に外観作出した場合に比べ

   大きいものとはいえない。
 イ また、Cについても、BがAから取得した甲土地を短期間のうちに手放

   すことになった経緯につき疑問を感じたにもかかわらずBからの説明のみ

   で外形を信頼したことからすれば、正当な理由があったとはいえない。
 ウ 以上より、Cに94条2項、110条の類推適用や法意の類推に

   よる保護を受けることはできないと解する。
3 よってCは、甲土地の所有権を取得することはできず、AはCの請求を

   拒むことはできない。

第2 設問1(2)について
1 Dの請求1について
(1)DのCに対する請求1がみとめられるには、前提として甲土地に

   ついて、Dとの二重譲渡関係にあるB(Cの前主)に甲土地の

   譲受を対抗できなければならない。
 ア BとDはともに所有者Aから甲土地を譲り受けたものであり、その

  優劣は登記の先後によって決まるのが原則である(177条)。

  しかし、Bが背信的悪意者といえる場合には、「登記の欠缺を主張

  するに正当な利益を有する」とはいえず、177条に言う「第三者」

  とはいえないとされる。
 イ 思うに、BはAからDとの契約を進めるべく抵当権抹消を依頼され

  ていたにもかかわらず、もっぱらDを損害を与える目的で自らが甲土地を

  取得したものであり正当な競争に基づいて所有権移転登記を経た

  ものとはいえない。よってBはDとの関係では背信的悪意者であって、

  登記の欠缺を主張するに正当な利益を有する第三者とはいえない。
 ウ よってDはBに対しては登記なくして甲土地の譲受を対抗できる。
(2)では、DはBからの甲土地の譲受人であるCに対しても登記

  なくしてその所有権を主張できるか。
   思うに背信的悪意者が排除されるのは、信義則上登記の欠缺を

  主張することが許されないからであり、背信的悪意者からの譲受人が

  直ちに信義則違反とはいえず、譲受人自身にも背信性が認められ

  なければならないと解する。Cについては、BがDに損害を与える意図

  までは認識しておらず、特にBと同様の背信性は認められない。
   よって、CはDとの関係では177条の第三者に該当しDはCに

  甲土地の所有権取得を対抗できない。
2 Dの請求2について
(1)Dの請求2が認められるための法的根拠としては、DのAに対

   する債権を保全するために詐害行為取消権(424条)が

   考えられる。
(2)詐害行為取消権の要件としては、債権を保全するためであることが

   必要である。
 ア まず被保全債権について、DのAに対する債権は甲土地の所有権

   移転登記請求権だが、特定の権利を保全する為に詐害行為取消

   権を行使することができるかが問題となる。
    確かに、詐害行為取消権は責任財産の保全のための制度であり、

   特定の権利を保全するために行使することはできない。ただ、特定の

   権利についても不履行となった場合には損害賠償請求権に転化する

   のであって、これを保全するために被保全債権制を否定されることはない。
 イ 次に詐害行為の対象行為は、Bへの売却行為であるが、甲土地の

   時価4,000万円であるところ、2,000万円での売却と

   いうものであって、またAが債務超過であったことからすれば、かかる

   売却行為には詐害行為性がみとめられる。
 ウ BにDへの詐害意図があったことは明らかであり、AB間の契約④

   を詐害行為として取り消すことができる。
(3)では、転得者であるCに対して契約⑤について詐害行為として

   取消を主張できるか。
 ア 転得者への詐害行為取消請求(424条の5)の要件としては、

   転得者が「債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき

   (1号)」に該当することが必要である。
 イ Cは契約⑤締結時に、AD間の契約③の存在及びAが十分な

   資力を有していないことを知っていたが、Bの加害意図は知らなかった。

   このような場合にも「債権者を害することを知っていたとき」にあたるか。
 ウ 思うに、詐害行為取消権が、債務者の財産保全を目的とするもので

   あることからすれば、当該行為の際、債務者の無資力及び対象

   となる詐害行為の存在でたりると解する。
 エ 本問では、転得者CはAD間の契約③の存在及びAが十分な

   資力を有していないことを知っていたのであって債権者Dを害する

   ことを知っていたと言うべきである。よって、DはCに対して詐害行為

    取消権を行使できる。
(4)DがCに対して詐害行為取消権により、甲土地につきAへの所有

    権移転登記手続を請求しうる。424条の6第2項で「転得者

    に対する詐害行為取消請求において,債務者がした行為の取消

   しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができる。」

   とあるが、これはDへの直接の移転登記請求ではなく、債務者Aへの

   移転登記請求を意味すると解すべきである。

第3 設問2について
1 ㋐の主張の根拠について
(1)まず、GはFから乙建物を賃借しているところ、乙建物がFから

   Hに譲渡され登記を経たことにより、Hは賃貸人としての地位をG

   に対抗できる(借地借家法31条)一方で、賃貸目的物の

   譲受人Hに賃貸人たる地位が移転することとなる

   (民法605条の2第1項)。
(2)その結果、GはHを乙の賃貸人として取り扱うこととなり、Fに対して

    賃料を支払う必要はないというのが㋐の主張である。
2 ㋑の反論について
(1)これに対して、「賃貸人の地位が直ちにHに移転する効果を生ず

   べき譲渡があったわけではない。」と言う㋑の反論については、契約⑦

   は「借入金を担保する目的」である点を根拠にするものである。
(2)まず、契約⑦は、債権担保のための譲渡(譲渡担保)である

   から、かかる契約の性質をどのように捉えるかが問題となる。
   思うに、債権担保を目的にその所有権を移転する以上、端的に

   担保権としての性質の限度で権利が移転していると解すべきである。

   そのような観点からすれば、乙建物の所有権は確定的に移転

   しているとはいえず、依然Fに保留されていると解すべきである。
(3)もっとも、本件においては、被担保債権である債務αの弁済期が

   経過しているが、Hにおいて契約⑦に基づく担保の実行も、乙建物

   の第三者への処分もしていないことから、確定的に乙建物の所有権

   はHに移転していない。よって乙建物の「譲渡」がなされたとはいえない。
(4)以上より、Fの㋑の主張には根拠があり、請求3は認められる。
3 更に㋒の主張について
(1)仮に、譲渡担保が所有権を移転させる法形式をとる以上、

  605条の2第1項に言う「譲渡」がなされたとしても、㋒の主張が

  みとめられるかを検討する。
(2)この点、賃借建物が譲渡された場合であっても、なお譲渡人に

   賃貸人としての地位が保留されるためには、民法605条の2第2項

   により、(ⅰ)賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨の合意及び(ⅱ)

   その不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意が必要とされる。
(3)本件では、FH間において、(ⅰ)の合意はみとめられるが(ⅱ)の

   合意は認められない。
   しかし、賃貸人としての地位を留保する契約は債権担保を目的と

   するものであり、(ⅱ)の合意がなくても、目的物の譲渡人が譲受人

   に対して、貸金の定期的な返済を約束しているのであれば、(ⅱ)の

   合意と同様の効果があるものと考えられる。よって、605条の2

   第2項を類推適用により契約⑦の合意で賃貸人としての地位留保

   を賃借人に対抗できると解する。
   これに対して、既に譲受人に対して登記が移転している以上、

   賃借人Gは賃貸人としての地位が移転しているかどうかの判断

   がなしえず、賃料不払いのリスクを負うことになって不当であるとの

   反論もあり得るが、賃借人は元の賃貸人に問い合わせることも

   可能であるし、民法478条や供託(494条2項)によって

   保護されると考えられるから、前述のように解しても不当であるとは

   いえない。
(4)よって、仮に㋑の反論が認められなくても、㋒の主張がみとめら

   れるのであって、以上を根拠に請求3は認められる。

第4 設問3について
1 KのMに対する丙不動産を贈与する旨の契約(契約⑧)は、

  死因贈与である。
  契約⑧では、Kの死亡の際に丙不動産の所有権をMの相続

  人であるLが移転すべき義務を負うことになる。
2 これに対して、Kは後にNに贈与する旨の遺言書を作成している

  ところ、契約⑧は、Mへの遺贈する旨の遺言と抵触する。死因贈与に

  ついては、「その性質に反しない限り」遺贈の規定が準用される

  (554条)ことから、契約⑧と抵触する遺言書により撤回された

  とするのが㋓の主張の根拠である。
3 そこで、遺言の撤回(1023条)が死因贈与にも準用される

  かが問題となる。
(1)思うに、遺言者がその財産を生前には自由に処分できるも

  のであって、その最終的な意思を尊重するのが妥当であることから、

  原則として遺言を自由に撤回できるものとし、また遺言に抵触する

  法律行為がなされた際は遺言を撤回したものと見なすこととした

  ものである。
(2)そうだとすれば、死因贈与についても贈与者の死亡を原因

  として財産権を受贈者に移転するものである点で遺贈と同様であり、

  先になされた死因贈与に抵触する新たな遺言がなされた場合は、

  1023条により死因贈与が撤回されるものと解すべきである。
(3)この点、死因贈与は遺贈と異なり契約であるから,受贈者の

  期待権を一方的に侵害することはできないとして、遺言により撤回

  できないとする反論が考えられる。しかし、通常の死因贈与におい

  てはもっぱら受贈者は利益を受けるのみであり、かかる期待よりも

   遺言者の最終意思が原則として尊重されるべきであると解する。

  そして、契約⑧は単にMに丙を贈与するというものであり、Mの期待

  をKの最終意思に優先して保護すべき理由はない。
(4)以上より、Mへの死因贈与は民法1023条により後の

   遺言により撤回されたとみなされ、請求4は認められない。
                                     以上

 カテゴリー : 一般, 法律

令和3年度 司法試験刑事系(刑法)解答例

問題文はこちら↓

https://www.moj.go.jp/content/001350706.pdf

 

令和3年度 司法試験刑事系1(刑法)
【解答例】
第1 設問1について
1 甲の罪責
   甲は乙とB店へ押し入って腕時計を強奪することを共謀していたが、

  実際にはB店を看守する丙と意思を通じて「強盗」を演じたのであって、 

  「暴行・脅迫を手段としての財物の奪取」はなされておらず、単に時計

  を窃取したに過ぎない。よって、甲にはB天からの時計の奪取は窃盗

  罪を構成するのであって,強盗罪は成立しない。
2 丙の罪責
(1)丙は甲と共謀して強盗を装って,自己が勤務するB店から甲が

      時計を窃取することに加功している。よって丙は窃盗罪の共犯となる

      が、共同正犯か、狭義の共犯(教唆・幇助)かが問題となる。
     丙は,甲から話を聞いてB店の状況(開店前なら客は来ないと

      言うような)についての情報提供をしていること、甲から協力を求めら

      れたのは警備体制に関する情報であったところ、これにとどまらず積極

      的に甲が「強盗」を演じる手助けを自ら提案し,実際にもそれをして

      いること、甲の奪取が成功した暁には、分け前を要求していることから

      すれば、甲の窃盗を単に手助けしたにとどまらず、甲との間で窃盗に

      ついて自己の犯罪を実現させようとしたものといえる。よって丙には窃

      盗罪の共同正犯が成立する。
(2)なお、丙は、B店の副支店長であり、帳簿作成や売上金管理等

     の業務をしていたことから、横領罪の成立が問題となるが、丙にはB

     店において商品の仕入や店外への持ち出し等の権限はないことからす

    れば、B店の商品に対する占有者とはいえない。よって、甲と共同した

    時計の奪取行為には横領罪は成立せず、専ら窃盗罪が成立する。
3 乙の罪責について
(1)乙は甲と強盗罪を共謀したものであるが、実際には甲は「強盗」を

      丙と演じているに過ぎず、乙は窃盗罪に加功した認識はない。
      しかし、乙は甲との共謀の結果、甲とのあいだで役割分担として見

      張り役をしており、その機会において甲が強盗ではなく窃盗を行ったもの

      であり、客観的に乙が甲の行為に加功した(本件窃盗行為における

       意思の連絡の射程内である)ことは否定できない。
(2)そして、乙は強盗罪に加功する意思であった点についても、構成要件

       の重なり合う限度で故意は認められるのであって、甲との間で窃盗罪

       の共犯としての罪責を負う。
(3)では、乙は窃盗罪の共同正犯となるのか幇助に過ぎないのか。

        乙の役割は見張り行為であることから、実行行為の分担をしていない

     のではないかが問題となる。
    思うに、共同正犯は本来単独で行うべき犯罪を他の行為者と意思

    を通じ合って実行することで、心理的及び物理的に相互に補完・援助し

    合う点に処罰の根拠が認められる。よって、行為時の役割のみで判断

    すべきではなく共謀により自己の犯罪を他人を介して実現しようとする

    ものであるか否かで判断すべきである。

       そうだとすれば、単に実行時に見張り役であったとしても、他の行為者

    の行為を自己の行為と同視しうる立場でこれを容易にすべきものであっ

    た場合は共同正犯となり得ると解する。
   本件の乙については当初から甲と共謀をしており、その中で乙が見張り

    役・甲の逃亡の援助役を分担をしたものであって、また甲の奪ってきた

    時計をその行為の分け前としてもらうこととなっていた点も踏まえると、実行

    者である甲の手助けをしているにとどまらず,甲の行為を自己の行為

    として役割を分担しているものである。よって、乙についても甲の窃盗に

    ついて、その共同正犯としての責めを負う。
4 丁の罪責
(1)丁は丙から,B店から奪ってきた時計在中のバッグを預かったもの

      であるが、預かった時点ではバッグの中身も事情も知らない以上、

       盗品等保管罪は成立しない。
(2)その後、不審に思ってバッグの中身を見た際に、丙がB店から無断

      で持ち出した商品であると認識した上でなおこれを保管し続けた点は

      丁に盗品保管罪が成立するか。
     思うに、盗品等の罪の保護法益は、本来の権利者が窃盗その他

     の財産犯に対して当該物に対して追求する権利であり、同罪はこれ

     を侵害するものであると解される。そうだとすれば、保管の当初盗品で

     あることを知らなかったとしても、情を通じて以降もなお保管を継続した

     とすれば、その時点からかかる追求権を侵害したことになる。

       よって,丁には盗品等保管罪が成立する。
(3)なお、丁が預かったのは丙が窃盗により取得してきた時計類である

      ところ、丁は乙が勝手に持ち出したと認識しているが、盗品であること

      の認識に齟齬はない以上、この点が丁の故意を阻却することにはならない。

第2 設問2について
1 設問2(1)について
(1)乙の頭部裂傷の傷害は、甲丙の暴行の共同正犯によるといえるか。
      この点、当初の暴行(丙が乙を羽交い締めにし、甲が木刀で乙の

      頭部を殴った点)は甲と丙の共同にてなされたものであるが、途中で

      乙の言動に立腹した丙が更なる暴行に及んだ(ここまでを以下、第1

      暴行という)ところ、甲が暴行を終了させようとしたにもかかわらず、な

      おも丙は甲を殴って転倒・気絶させ、その後も乙に暴行を加えたもの

     (以下「第2暴行」という)である。
(2)そうすると、甲に乙の頭部裂傷の傷害結果に関する刑事責任を負わ

   ないとする立場は、第2暴行について甲が共同正犯としての責任を負

   わないとしなければならない。

   そのための説明としては以下の2点が考えられる。
 ア 共謀の射程の問題
   まず、第2暴行は、甲は丙から殴打され、気絶しており、その後の丙の

  暴行は丙単独で行われていることから、当該暴行は甲と丙の共謀の射程

  外であると説明が考えられる。
   すなわち、当該行為が共同正犯の範囲内にあるといえるには共謀の内

  容等に照らして射程内にあるといえなければならないが、当初の行為から

  共同行為者の一人が他の者の予想外の行為に及んだときは共謀の射

  程外であるといえる。本件においても、甲は、当初の共謀では甲は自ら

  が殴打すべく、丙には乙を押さえてもらうよう頼んでいたところ、第2暴行

  については丙が乙を殴打するに及んでおり、この点は甲の予想外と言わ

  ざるを得ず、共同正犯としての責任を負わない、と説明することになる。
 イ 共犯関係の解消
   また、共同行為者間において途中でその一部が行為から離脱したと

  認められるような場合には,離脱以降の行為について因果的に寄与

  していないことから責任を負わないとされる。この点本件では第2暴行

  には甲は関与しておらず、その理由が丙から暴行を受けたことで、自身が

  以降の暴行に関与できなくなったことや、以降の暴行は専ら丙の判断

  でなされていることからすれば,因果的に行為に寄与したとはいえず、

  第2暴行の時点では共犯関係が解消していると説明することが考えられる。
(3)もっとも、上記アイが認められた場合でも甲に同時傷害の特例(207条)

   が適用され、共犯として扱われる結果、本件傷害結果について責任を負う

   ことになり得る。
    しかし、同条は、疑わしきは被告人の利益にという刑事責任の大原則

   に反するものであり、適用範囲は限定的にとらえる必要がある。そこで、

   傷害結果に責任を負うものがいない場合についてのみ207条が適用

   されると考える。
    本件では、丙が乙に対する一連の暴行にすべて関与しており、本件

   傷害結果について責任を負うことになる。
    よって、甲に207条の適用はなく、甲は乙の傷害結果に関する

   刑事責任は負わない。
2 設問2(2)について
(1)甲に乙の頭部裂傷の傷害結果に関する刑事責任を負うとする立場は、

   前述1(2)の説明を否定することにより説明することになる。
 ア 共謀の射程について
   この点、当該行為が共同正犯の範囲内にあるといえるには共謀の射程は、

  時間的場所的接着性、共謀の内容と具体的な経過の齟齬の程度、等

  を考慮すべきであるところ、甲丙は,乙に傷害を与える旨の共謀をして

  いること、被害者の態度が予見可能なものであること、丙の暴行は甲との

  共謀に基づいてなされた暴行に密着してなされていること、からすれば、

  共謀の射程外とはいえないと説明することになる。そうすると本問において

  なされた第1,第2の暴行全てが共同正犯としてなされたものとして

  いずれの暴行によるかにかかわらず、甲には乙に対する傷害に対して共同

  正犯としての責めを負うことになる。
 イ 共犯関係からの解消について
   共犯関係からの離脱の要件としては、共犯関係からの離脱が了承される

  ことによって、共犯関係における因果の流れを断ち切ったといえる必要がある。

  この点、本件では丙が甲の離脱を了承したという事情もない。
   もっとも、第2暴行は丙が甲の制止を振り切ってなされており、かつその暴

  行時に甲は気絶をしている状態を認識しつつなされていることから、第1

  暴行と時間的場所的に接着しており、第2暴行は甲と丙の共謀が発端

  となっていることからすれば、甲は第2暴行との因果の流れを断ち切ったと

  までいえないと考える。よって甲に共犯関係からの離脱ないし解消は認め

  られないと説明することにより、甲には乙の頭部裂傷についても傷害罪の

  共同正犯として責任を負うこととなる。
(2)仮に、甲に第2暴行について共謀関係の射程外であるか、共犯関係

   からの離脱ないし解消が認められたとしても、207条の適用があるとさ

   れるのであれば、甲は乙の頭部裂傷についても責任を負うこととなる。
 ア この点、傷害結果について責任を負う者がいる場合に207条が適用

  されないとすると、傷害結果について責任を負う者がいない場合と比べて

  不均衡な結果となるとして、207条は、➀2人以上の者が、意思の

  連絡なくして同一人に故意に基づいて暴行を加えた事実が存在し、

  ②暴行が同一機会に行われ、③傷害となる暴行が特定できなかった場合

  に認められる,とする見解が考えられる。
 イ この見解からすれば、本件では、甲と丙が乙に対する暴行を共謀しては

  いるものの、第1暴行は乙が到着するや否や丙が乙を羽交い絞めにして

  甲が殴っており、第2暴行も甲が気絶している間に行われたものであるから、

  互いの意思の連絡なく乙に暴行を加えている(➀)。また、第1暴行と第2

  暴行は同一の場所で、時間も近接した中で行われているので同一の

  機会に行われたといえる(②)。そして、乙の傷害結果が第1暴行による

  ものか、第2暴行によるものかいずれの暴行から形成されたのか不明で

  あるから、傷害となる暴行が特定できなかった場合といえる(③)。
 ウ 以上より、かかる見解からは207条が適用され、甲は乙の傷害結果

  について刑事責任を負うとの反論が考えられる。
                                         以 上

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令和4年司法試験・刑事系(刑法)解答例

問題文はこちら↓↓
https://www.moj.go.jp/content/001371991.pdf

 

【解答例】
第1 設問1について
1 (1)の主張について
(1)甲に横領罪が成立するには、「自己の占有する他人の物」を「横領した」

   といえなければならない。
    この点、甲は本件バイクを保管しており、他人の物を占有しているといえる。

   問題は、委託信任関係に基づく占有といえるかである。甲はAが盗んできた

   バイクをAからの依頼で保管していることから、正当な権利者からの委託信

   任関係はないからである。思うに、横領罪の保護法益は所有権その他の本

   件であるが、これを保護するに当たっては、なんらかの委託信任関係に違背

   したものを対象とすべきであると考えられる。このように考えることが、窃盗罪

   等ほかの領得罪において一応の占有を保護する趣旨と同様に位置づける

   ことができるからである。
(2)そうだとすれば、窃盗犯から盗品の保管を委託された場合であっても、そ

   の物を「横領」した場合には横領罪が成立すると解すべきであり、(1)の主張

   はこの見地から妥当である。
2 (2)の主張について
(1)甲の(2)記載の行為が「横領した」といえるかは、まず「横領」とは何かが

   問題となる。
    この点、横領罪も権利者を排除して目的物を自らのほしいままにするという

   性格上、他の領得罪と同様に、不法領得の意思が必要である。ただ、横領

   罪の場合は占有を侵害するものではないことから,その意思は「委託の趣旨

   に反して、その物の効用に基づいて所有者でなければできないような処分をす

   る意思」であると思料する。
(2)問題は、Aに無断で甲の実家の物置内に本件バイクを隠した行為に横領

   罪における不法領得の意思が認められるかである。
    思うに、甲は本件バイクについて単に隠匿しただけであって、Aの委託の趣旨

   に必ずしも反したとは言いがたい。また本件バイクを利用・処分する意思もなく、

   物の効用に従った利用をする意思も認められない。よって、甲には本件バイク

   に対する不法領得の意思は認められず、横領罪は成立しないと解されるので

   あって、(2)の主張は妥当でない。

第2 設問2について
1 乙がAを本件ナイフで刺した行為に傷害罪(204条)が成立するか。
(1)乙は、甲を助けようとしてAをナイフで刺したのであり、乙に正当防衛が成立

   するかがまず問題となる。
2 正当防衛が成立するには「急迫不正の侵害」の存在が要件となるが、本問に

  おいてAから甲に対する「急迫不正の侵害」があったといえるか。
(1)およそ甲はAとの盗難バイクを巡っての諍いから、Aとケンカ状態になること

   を予想し、現実にもAからの殴打行為に対して甲も包丁を持ち出すなどの

   ケンカ状態に陥っていたものである。この場合、Aの甲に向けての殴打行為が

   甲にとって一方的に差し迫った侵害とはいえない。そうだとすれば、Aの行為

   が甲に対する「急迫不正」の侵害とはいえないと解される。
(2)よって、甲に対するAの殴打行為から乙が甲を助けようとして、ナイフで

   刺した行為は急迫不正の侵害に対するものとはいえず、正当防衛は成立

   しない。
(3)もっとも、乙が行為に及んだのは、Aが甲を殴打しようとしているのを目撃

   し、「Aが甲に対して一方的に攻撃を加えようとしていると思い込んで」おり、

   甲のために防衛行為に及んだのであるから、急迫不正の侵害があったと誤

   信している。一方、かかる行為はAが素手で殴ろうとしているのに対して、

   警告もせずいきなりナイフをAの右上腕部に突き刺していることは、防衛行為

   として過剰と言わざるを得ない。以上からすれば、乙の行為はいわゆる「誤想

   過剰防衛」であるといえる。
(4)誤想過剰防衛については、乙には上記の思い込みにより、急迫不正の

   侵害についての誤信がある以上、この点に故意を認めることはできないと解

   される。しかし素手のAに対して警告もせずに危険なナイフで刺すという行為

   に出ている点からは過剰性についての認識が否定できない。そして正当防衛

   状況にあっても相当性を欠くときは過剰防衛として正当化されないことから

   しても故意を阻却することはできないと解する。よって乙には傷害罪が成立する。
(5)なお、乙に36条2項の類推適用により、刑の減免の余地があるか。
   思うに、36条2項で過剰防衛に刑の減免を認めたのは,急迫不正の侵害

   に対しては往々にして過剰な行為に出てしまう場合があるということから行為

   者の責任が減少すると考えられることによる。
     しかし、誤想過剰防衛においては、そもそもが防衛行為が正当化される

   余地はない。このことからすれば、類型的に責任を減少させるとは言いがたく、

   同条の類推適用は認められないと解すべきである。
3 乙が本件原付をDに無断で発進させた行為に窃盗罪(235条)が成立しないか。
(1)まず、乙は本件原付を他人の物であることを認識しながらその承諾を得

   ることなく、自己の占有下においたものである。所有者であるDはエンジンを

   かけたまま一時的に止めていたのであるから、なおDの占有下にあるといえ,

   乙はこれを侵害したといえる。
(2)また、乙は一時的であっても所有者Dの占有を排除して発進させたので

   あり、しかも安全な場所へ移動したら放置しようとしたのであって、権利者を

   排除して物の経済的用法に従った利用・処分をする意思はあったといえる。

   よって乙の本件原付への占有侵害は窃盗罪の構成要件に該当する。
(3)もっとも、乙はAの追跡を振り切るために,本件原付を発信させたこと

   が緊急避難(37条)に当たらないかが問題となる。
    確かに、Aが乙を追いかけてくる状況に陥っていることからすれば、乙が

   Dの原付を運転したのは、現在の危難を避けるためにやむを得ずにした

   行為であるかに見える。しかし、Aが乙を追いかけてくる状況を作出した

   のは、自らのAに対する傷害行為に基づくものであって、かかる傷害行

   為が正当化されないものである以上、やむを得ない行為といえるかは極

   めて厳格に検討すべきであると解される。これを前提にすると、乙はナイフ

   を取り落としており互いに素手になっていること、刺されたにもかかわらず,

   乙を痛めつけようとして追ってくるような気性のAから追いかけられたこと、

   一方乙はAから蹴りつけられ、更に殴る蹴るの暴力を振るわれると思った

   こと、乙がAの追跡を振り切るために唯一の手段とされる原付の発進を

   行ったこと,等に鑑みると「やむを得ない」かどうかを厳格に判断したと

   しても、乙が現在の危難を避けるためにやむを得ずにしたとみて良いと

   考えられる。更に、身体の危険性とDの財産権とを比較しても、後者

   が前者に比して侵害が大きいとまではいえない。
     以上より、乙には緊急避難が成立し、この点について窃盗罪は

   成立しないと解する。
(4)なお、乙の当該行為に正当防衛は成立しない。Aの追跡行為が乙

   の傷害に起因する以上、急迫不正の侵害とは言いがたいし、無関係

   のDの権利の侵害が正対不正に対する防衛行為を容認する正当防衛

   とはいえないからである。
                                        以上

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令和5年司法試験・刑事系(刑法)論文問題解答例

思うところがあって、近年の司法試験の問題について解答例を作成してみることとした。
先ずは、令和五年度刑法の論文問題について解答例をあげてみる。
 問題文はこちら
  ↓ ↓
https://www.moj.go.jp/content/001400046.pdf

令和5年度 司法試験 刑事系科目(第1問 刑法)

【解答例】
第1 設問1について
1 (1)について
(1)詐欺罪の未遂が成立するには,詐欺罪の実行の着手が認められなければならない。
(2)およそ実行の着手が認められるには、実行行為に密接した行為が開始される、あるい

   は法益侵害の現実的危険性がある行為がなされたといえなければならない。
(3)詐欺罪は、欺罔行為により、錯誤に陥ったものが財物を交付することで成立するが、

   財物の交付を要求する段階に至らなくても、実行の着手を認めてよい場合がある。なぜ

   なら欺罔行為がなされた段階で財物の交付に対して密接性を有し、あるいはその段階

   で財物に対する現実的危険性がすでに顕在化したと評価できる場合があるからである。

   このように考えると、欺罔行為により財物交付の危険性が現実化していれば、交付を要

   求しなくても詐欺罪の実行の着手があったと評価してよい。判例も、欺罔行為により錯誤

   に陥った被害者が財物の交付が可能な状態に至った段階で、財物の交付を要求するに

   至らなくても詐欺罪の未遂を認めている。
2 (2)について
(1)上記の視点からすれば、詐欺罪の場合、欺罔行為が財物交付に向けての現実的

   危険性があるかどうかから判断することになる。
(2)そこで以下のように検討する。
   ア まず①では被害者に何らの働きかけもしていない
   イ ②の段階でも電話1での欺罔行為は財物の交付の準備に向けられていないだけで

    なく被害者への働きかけによっても共謀内容・犯罪計画が明らかとはなっていない。

    よって、②でも実行の着手を認めることはできないと解する。
   ウ 一方、③の電話2をかけた段階では、まだ現金の準備はされていないものの、それに

    向けられた欺罔行為は明らかにAへの働きかけという意味での意図が表現されている

    点で②と異なる。そして、現実に錯誤に陥ったAが現金の準備をしているのであって、

    受け子がA宅を訪問すればAが現金交付した蓋然性は高い。この状態を誘発したの

    は③の欺罔行為であって、特に支障のない限りAが財物交付にいたることの蓋然性が

    この段階において生じているといえる。そうだとすれば、Aに現金引き出しを指示する架

    電行為③に詐欺罪の現実的危険性が認められると言うべきである。
      よって、③の段階で甲らに実行の着手を認めるのが妥当であると解する。
第2 設問2について
1 まず乙と丙には、共同してBを縛り上げて金を奪ったのであるから、強盗罪(236条1

  項)の共同正犯が成立する。
2 次に、乙と丙の強盗行為が終了してから、Aは転倒して傷害を負ったものであるが、かか

  る傷害結果についても乙と丙に責任が及ぶか。
(1)この点、強盗傷害罪が成立するには、強盗行為(強盗の手段たる暴行脅迫はもち

   ろん、強盗の機会になされた行為も意味する)と傷害との間に因果関係が存在すること

   が必要である。
(2)刑法上の因果関係の存否は、当該行為から結果が生じたことが,一般社会上の

   経験に照らして相当といえる必要があるところ(相当因果関係説)、特に行為後の

   事情については、行為時において一般人の見地から予見可能でなければならないと

   考える。
(3)Bの傷害は乙丙の強盗行為が終了して2時間程度経ているが、高齢の男性であ

   るBが強盗行為終了後も手足を縛られて不自由な状態におかれていたのであり、B

   が転倒した原因は手足を縛られたことからすれば、乙丙の行為が原因となってなんらか

   の傷害を負うことは十分に予見可能であったものであるといえる。

    よって乙丙の強盗行為とBの傷害との間の因果関係は認められる。
(4)また、乙丙にBに対する傷害の故意はないものの縛り上げて放置することからBに

   傷害が生じ得ることは予見可能だったといえ、結果に対する過失も認められる。
(5)以上より、強盗致傷罪の致傷結果に過失を要求しない立場はもちろん過失を要

   するとしても、乙丙に強盗致傷罪(240条前段)の責を免れない。
3 甲の罪責
(1)甲は、乙丙らとBから現金をだまし取ることを共謀したが、乙丙は強盗(致傷)に

   及んだものであり、甲に強盗の故意は存在しないから(38条1項)、強盗罪(致

   傷も含む)は成立しない。
(2)もっとも、甲が乙丙らと共謀したことがきっかけとなり、乙丙が強盗に及んだことから、

   甲には詐欺罪の限度で罪責を負わないか。
  ア 共謀内容と実際に行われた犯罪との間に齟齬がある場合、果たして当該犯罪が

   共謀に基づいてなされたといえるか,すなわち共謀の射程が問題となる。
    思うに、当該犯罪が当初の共謀の射程内にあるといえるには、共謀により当該犯罪が

   実現されたといえなければならないと考える。そしてその判断基準としては、共謀と犯罪

   行為との時間的場所的間隔の近接性、共謀者の関与の程度、共謀内容から想定

   される犯罪内容との相違の大小、罪名の齟齬の多少などから総合的に判断すべきで

   あると解する。
  イ 本問の甲においては、共謀がきっかけとなって乙丙の強盗行為を招来したといえなくは

   ないが、そもそも甲はあくまでも詐欺を前提に乙丙にその指示を出していること、甲の欺

   罔行為によりBが錯誤に陥っており、甲の指示どおりに乙丙が行動すれば,その実現は

   容易であったと考えられること、さらに詐欺と強盗では罪質が異なること、からすれば、

   およそ乙丙の強盗が甲の共謀の射程であったと考えることはできないと思料する。
  ウ よって、甲には強盗罪はもとより乙丙の行為を原因としては詐欺罪の限度でも罪責

   を負うことはない。
(3)ただし、甲は自らBに対する欺罔行為を行っており、前述のように2回目の電話

   をかけた時点で詐欺罪の実行に着手したと考えられるから、結果に対する罪責を負

   わないとしても詐欺未遂罪が成立する。
     以上より、甲には詐欺未遂罪が成立する。
第3 設問3について
1 前記6で丁に業務妨害罪が成立しないとする見解について
(1)まず、丁に業務妨害罪が成立しないとする結論を導くには、およそ「公務」は

   「業務」に該当しないとする(ア説とする)か、あるいは権力的公務は「業務」に当

   たらないとする見解(イ説とする)が考えられる。
(2)すなわち、ア説では丁の行為が公務を妨害していることは明らかであるが業務性が

   否定される以上、公務執行妨害罪に該当しない程度の威力によるものに業務妨

   害罪は成立しない。後者の見解でも逮捕行為が権力的公務であることは当然で

   あるから同様である。
2 一方、前記7で丁の業務妨害罪を肯定するには、上記の見解との関係でどのように

  説明すべきか。
(1)まず、前記7における警察官5名の職務は「乙の追跡・逮捕」であり、これは権力

   的「公務」といえる。
(2)この点、ア説からは、本件職務は「公務」であって「業務」には当たらないので業務

   妨害罪は成立しない。そしてこの帰結はこの説では修正できない。
    思うに、公務にも多種多様なものがあり、これを一律に業務に当たらないとすること

   自体妥当ではない。やはり、業務の性格上、これを不当に妨害する行為に対しては、

   公務執行妨害罪での対応に限定せず、業務性を肯定すべきであると考える。
(3)そうすると、やはり業務に対する妨害を排除可能とするイ説を基本とすべきである。

   ただ、権力的公務について一律に業務性を否定するのであれば、前記7について,

   業務妨害罪の成立を認めることはできない。
    そこで、権力的公務の範囲を限定し、警察官の応援を求める段階では、抵抗を

   排除できるだけの権力的公務に該当しないとする見解が考えられるが、この説では、

   「権力的公務かどうか」の判断が場当たり的になるように思われる。
(4)結局、権力的公務については、威力のような抵抗を排除できるもののみ業務妨

   害罪の対象外であり、権力的公務であっても排除できない偽計による業務妨害は

   否定されないとすることが考えられる。この見解からすれば、権力的公務において

   排除できるかどうかで業務妨害罪の成否を判断することになる。
3 まとめ
   以上より、丁の行為が6において業務妨害罪が否定され、7において肯定されるには、

  権力的公務に業務妨害罪は成立しないという立場を原則とした上で、権力的公務に

  も一定の場合には業務妨害罪を認めるという見解が妥当であると考える。
                                                以 上

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破産手続の期間(その1)受任から申立まで

 依頼者から「破産の手続にはどれくらいかかりますか」という質問をよく受けます。

 

 これに対しては私も明確には説明しずらかったのが本当のところです。

 

 というのは、受任してから各債権者への通知をおこない、請求をストップさせても、実際に申立に至るまででもどの程度時間がかかるかは様々だからです。

 

 また、申立を行っても、裁判所から補足・訂正の指示が来たりすることがありますが、その内容によってはなかなか対処できない場合もあります。ただ、申立から開始決定までの期間や、開始決定から免責許可決定を受けるまでの期間は、比較的一定の期間内に収まることが多いです。

 

 そこで、あくまでも、当職が手がけた限度で、ここ数年の破産事件の日数(期間)を整理してみました。その結果分かったことを紹介したいと思います。

 

1 まず、受任してから申立までの期間は以下のようになっていました。
(1)平均
   ・受任全体     約210日
   ・同時廃止の場合 約176日
   ・管財事件の場合 約290日

 

(2)最長と最短
                最長      最短
 ・同時廃止の場合   1211日  46日
 ・管財事件の場合   1478日  39日

 

2 以上のように、当職の場合、受任してから破産の申立までの平均日数は同時廃止で約半年、管財事件で約10ヶ月となっていました。

 

  もっとも受任から申立にいたるまで1年以上かかるケースもあり、同時廃止の場合、年1件程度、管財事件でも年3件程度が受任から一年以上かかっていました。

 

  この原因ですが、管財事件として申し立てる必要があるときは、破産費用の準備に時間がかかってしまい、申立に時間がかかったケースがほとんどでした。

 

  そのほかの理由としては、依頼者の方が病気などで連絡を取るのに困難となったり、資料を集めるのに苦労され、結果として時間がかかってしまうケースもあります。

 

  また、同時廃止で申し立てたところ、裁判所の指示で管財事件に移行した場合などもあります。

 

  一方で、管財事件でも予納金の準備が速やかにできるときはむしろ同時廃止よりも申立が早くなることもあります(申立移行の手続に時間がかかるケースもありますが、その理由は別のところにあります。)。

 

 以上のように、破産事件について、まずは、受任から申立までの期間について、当職の扱った事件から目安となる期間をご紹介しました。

 

 これを踏まえてみれば、受任から申立までは、(あくまでも当職が受任した場合に限定してのことですが)同時廃止で約半年、管財事件で約10ヶ月はかかると考えていただければよいでしょう。

 

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浪費等と破産手続

 前回のブログ(11月19日)では、
「浪費があっても直ちに免責不許可となるわけではない」
ことを説明しました。

 

 だからといって

「浪費があっても自己破産において不利益な取扱をされることはない」

と言うわけではありません。

 

 浪費が原因で経済的な破綻に至った場合、免責不許可事由
であることは間違いありませんので、裁判所も免責を許可するかどうかを

慎重に判断することになります。

 

 したがって、このような場合には、財産の多寡にかかわらず
破産管財人を選任することが求められる場合があるのです。

 

 破産管財人が選任されると、破産者には以下の負担が
課せられることになります。

・管財人選任のための予納金納付

 破産管財人の専任のための費用負担として
 この場合、裁判所に最低20万円程度の予納金
 納める必要があります。

 

破産手続の長期化
 また、破産管財人は、破産者の免責不許可事由を
 調査するとともに、現状の生活状況から二度と同じことを
 繰り返さないように指導することとなります。
 その結果、必然的に破産管財人が選任されない場合
 (同時廃止)に比べて、破産開始決定から免責許可を
 受けるまでの時間が長くなります。

 

報告義務や郵便物の転送など
 破産手続が継続している期間中は、破産者は管財人や
 裁判所に対する報告義務を課せられ、また郵便物は
 いったん破産管財人の手元に届くことになり、直接
 郵便物を受け取るのに時間がかかるといった負担が
 あります。

 

 

もちろん、免責不許可事由がなくても一定の財産を
有している場合には破産管財人の選任は不可欠ですが
そう言った財産を有していなくても、浪費等の場合は
管財人を選任することが要求されることがあります。

 

なお、同じ浪費でもギャンブル等による場合の費消より
FX取引や株式投資など「投資」の失敗によるケースの
方が、管財人選任の可能性が高いというのが,
当職の感触です。
(「投資」名目の場合、その内容が把握しにくいことや
財産隠しの可能性があるからだと考えられます。)

 

 

いずれにしても
ギャンブル等による浪費の場合、管財人が選任される
ケースがありますが,誠実に対応することが
必要です。
具体的なケースについては申立に当たって
ご相談いただければと存じます。

 

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浪費と免責不許可について

 破産法は、免責不許可事由に該当しない場合に免責許可の

決定をすると規定しております(法252条1項)。

 

 免責不許可事由には、
 ①債権者を害する目的での財産減少行為
 ②浪費、射幸行為
 ③詐術による信用取引
 ④説明・調査義務違反(裁判所への虚偽説明も含む)
などがあげられます。

 このうち、個人の破産者の場合、②に該当する行為を行っていた人が少なくありません。

 

 もっともこういった免責不許可事由があるからと言って、

直ちに免責不許可となるわけではありません。

 

 破産法では、

「(免責不許可事由に該当する場合であっても)裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。」(法252条2項)

と規定しており、多くの場合裁量による免責が許可されています。

 

 実際、大阪地裁への破産申立の件数は年間約6000件程度であるのに対し、そのほとんどは免責が許可されているのが実情です(下記のように免責不許可となった件数は年間10件以下のようです。)。

 

 大阪地方裁判所では、最近における免責不許可事由の事例を紹介しております(月刊大阪弁護士会連載「はい6民です。お答えします」)。

 

 これによると免責不許可となった事例は,ここ2年(2022年9月号、2023年9月号)で18件が紹介されておりますが、そのうち13件が前述②を理由の一つとしています。

 ただ、②のみを理由として免責不許可となった事例は、18件のうち2件だけのようです。その2件も浪費の程度が数千万円に及ぶような極めて多額の浪費が問題にされている事例です。

 

 免責不許可となっている事例は、浪費等の存在以外に、説明義務や裁判所への協力、あるいは債権者集会への不参加など破産者としてすべき説明や協力義務に違反したことや、使途不明の財産隠し等の不誠実な行為がなされたことが併せて問題とされています。

 

 逆に言うと、過去の浪費・ギャンブル等の事実があったとしても、これを真摯に反省し、破産手続において誠実に対応することで裁判所からの裁量免責を得ることができると考えられます。

 

 したがいまして、免責不許可事由に該当する行為があったとしても、今後の対応次第で免責許可が得られる場合がありますので、決して諦めたり自暴自棄になったりせず、ご相談ください。

 

 そのためには、過去の浪費等を正直にお話いただくことが必要です。もちろんそこから今後の経済的再生に向けての反省点なども当職もともに考えて協力させていただきたいと考えております。

 

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アフターコロナにおける債務整理について

 コロナ禍で売上げが減少し、多くの企業や個人が債務超過の状態から
抜け出せないと思われますが、実際のところはどうなのでしょうか。

司法統計を見ますと以下のように最近の倒産の申立件数は
減少傾向にあったようです。

    破産   小規模個人再生  給与所得再生
R3年  73,457    10,509      740
R4年  70,602     8,982       782

(新受件数・令和4年司法統計年報速報版による。)
https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/644/012644.pdf

 

ここから見ると、令和4年度は3年度より倒産の数が
減っているように見えます。

 

しかし、これらはコロナ禍での補助金・貸付金の支給や
支払猶予などの措置により、法的な債務整理手段をとること
を控えたからではないかと考えられます。

 

したがって、これらの措置が解除されるに伴い
実際には既に倒産状態であった企業や個人が法的整理を
余儀なくされることが考えられ、破産申立等が増加する
と考えられているようです。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000600.000043465.html

 

上記サイトの記事では専ら企業の倒産に言及しているようですが
当然これらは個人にも波及すると思われます。

 

現実に当事務所にご相談に来られる方も
「コロナ禍で売上げが激減して支払が困難になった」
とか、
「派遣の給料が下がってしまい、それを補うために借入をしたが
返済が困難となった」
と言った事例が多く見られます。

 

アフターコロナにおいて、先ずは生活を立て直すために
収益や賃金確保も必要ですが、従前の債務をどのように
整理すべきかも検討する必要があります。

 

当事務所においても

そのお手伝いができるようにしたいと思いますので、遠慮なくお問い合わせ・ご相談ください。

 

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