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浪費が原因なら免責は不許可となるか?

 大阪弁護士会の機関誌OBAに 「はい6民です お答えします」という連載記事がある。

 

 大阪地裁の第6民事部(破産部)が、破産や再生手続などについての疑問点や取扱について情報提供してくれている記事であるが、9月号(2024年)では免責不許可についての事例紹介が掲載されていた。

 

 同様の記事は昨年(2023年),一昨年(2022年)と9月号に掲載されていたが、これらで照会されている免責不許可の事例は10件に満たなかった。

 

 ところが、今回は16件もの事例が紹介されている。今年は申立件数が昨年より増加しているとも言われており,免責不許可の事例も増えているのかも知れない。

 

 不許可の理由として、紹介されている事例のほとんど(16事例中14例)で、浪費・射幸行為(破産法252条1項4号・以下「4号」という。他の号数も同じ)があげられている。

 

 ただし、4号のみで免責不許可とされているものは3例しかなく、それらの事例は浪費が極めて多額(数千万円にも及ぶ)である場合や、借入金のほとんどが浪費に費消されている場合、支払不能となってからもなお浪費を続けていたことなど、浪費とともにプラスアルファの事情が考慮されている。

 

 また、4号とともに考慮されている事情として、

・破産管財人に対して、破産に至る経緯などについてきちんと説明をしなかったり、虚偽の説明をしていたもの(8号、11号)

・破産申立直前ないし申立後開始決定までの間に、破産原因(既に返済できない事情)があるにもかかわらず、これを秘して借入等をしたもの(5号)

・破産直前に借入をしていたことを隠したりするなど、財産を隠匿していたと認められるもの(1号)

等があげられている。

 

 これらの事例からすると、浪費のみで免責不許可になる事例は極めて少ないことが分かる。

 

 むしろ、浪費が破産の原因であるだけでなく、それに至る事情を隠していたこと、管財人の求めに対して説明を拒絶したり虚偽の説明をしていたという、破産手続への不誠実な対応こそが免責不許可の重大な判断要素とされているようである。言い換えると、多くの債権者に迷惑をかけているのに、その点を踏まえた反省の態度がうかがえないものこそ免責不許可とされるべきだとしているのである。

 

 一方で、たとえ支払不能の原因が浪費によるものであったとしても,その後の破産手続における十分な説明や真摯な手続への協力をすることで、破産者が同じことを繰り返さないという反省の態度を示されれば、免責許可となっている事例は多数ある(と言うかほとんどの場合はそうだろう。)。

 当職の感触としては、もともと裁判所は、破産に至った経緯(過去の過ち?)よりも今後同じあやまちを繰り返さないかどうかを基準に免責するかどうかを判断していると考えているのだろう。

 

 もちろん当事務所においても、二度と破産などを繰り返してほしくないというスタンスで破産手続を受任している。そのためには、それまでの生活態度を振り返って今後は二度と破産などしないで住む生活を送りたいという意欲のある方こそ破産手続で救済されてほしいと考えている。

 

 そうであれば、たとえ浪費などがあったとしても諦めずにご相談に来ていただきたい。二度目、三度目の破産申立であっても,誠実な破産者として立ち直る意欲があれば同様である。当職としても、そのための協力は惜しむことなく、がんばっていきたい。

 

 

 カテゴリー : 一般, 法律

現金が戻ってくる可能性?(その3)

3 チラシの問題性②:おとり広告の可能性

(1)過払金返還請求権を有する者の掘り起こしを目的とする?

 

  この点、おそらくは、この司法書士法人に依頼する人のほとんどが多重債務に陥っており、そのような人がこのチラシを見て「ひょっとして私の場合は?」と問合せをしてくるのだろう。

 

  しかし実際には過払金は存在しないか、あったとしても他の負債をあわせると「焼け石に水」といった状態であることがほとんどではないか。

 

  つまり、「現金が戻ってこない」多数の人たちが「現金が戻ってくる」というワードでこの広告により問合せをしてくるのだろうと考えられる。

 

   この視点から当該広告に更なる問題はないか。

 

(2)私は、このような手法は「おとり広告」に該当する恐れがある。

 

   すなわち、おとり広告とは、商品や役務を購入できるかのように表示しているが、実際には販売できる可能性や販売する意思がないことにより、消費者が表示された商品等を購入できないにもかかわらず、一般消費者がこれを購入できると誤認する恐れのある表示(広告)をいう。

 

   このようなおとり広告は、景品表示法においても不当表示としての規制を受ける。

 

   なぜかというと、このような表示は、表示された商品や役務に関心を持つ消費者を誘引した上で実際に販売する他の商品等を売りつける手段として用いられるからであり、かかる行為が一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するからである(西川康一編著・「景品表示法」第6版(商事法務)171ページ)。

 

   具体的には、どのような表示が「おとり広告」となり得るかが公正取引委員会の告示により定められており、具体的な運用基準も決められている(変更:平成28年消費者庁長官決定「『おとり広告に関する表示』等の運用基準」)。

 

cf.おとり広告に関する表示

 一般消費者に商品を販売し、又は役務を提供することを業とする者が、自己の供給する商
品又は役務の取引(不動産に関する取引を除く。)に顧客を誘引する手段として行う次の各
号の一に掲げる表示

 一 取引の申出に係る商品又は役務について、取引を行うための準備がなされていない
  場合その他実際には取引に応じることができない場合のその商品又は役務についての
  表示
 二 取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、
  その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示
 三 取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たり

  の供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない

  場合のその商品又は役務についての表示
 四 取引の申出に係る商品又は役務について、合理的理由がないのに取引の成立を妨げ
  る行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品又は役務に
  ついての表示

 

(3)さて、本チラシ広告の内容は、過払金返還請求権の調査とその請求代行をサービス内容とするものである。

 

   しかしながら、実際に過払金返還請求代行は,上記のようにほとんど可能性がなくなっていると考えられる。にもかかわらずかかる広告を続ける理由は、債務整理が必要な人たちを掘り起こすためではないかと私は考えている。

 

   そして、かかる広告は、「2012年以前からの借入をしていた人」という、極めて限定された人しか役務(過払金返還請求の代行)提供できないことは明らかである以上「取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示」に該当すると考えられる。

 

   世の中に多重債務者があふれており、その整理が必要な人はたくさんいる。そう言った人の大部分は本来返金の可能性などないのであって、そういう人も含めて「自分もそうかもしれないという」誤認を与える当該広告はやはり、おとり広告として不当な表示と言えるのではないだろうか。

 

 

   また、法律上の問題を置いても,明らかに「現金が戻ってくる」可能性のない人(それは最近借入をした人であれば明らかであろう)をも誤った希望を与えるのは、道義上も不当であろう。

 

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以上、3回にわたって、かかる広告チラシの存在とその問題性について考察してみた。

 

もちろん結果として,現金が戻ってこないし、債務も減らないことが分かった人が,債務整理を弁護士や司法書士に依頼することが問題というわけではない。

 

しかし、本来、そのような可能性は明らかに見当たらない人まで対象にした広告をするような業者は、景表法といった法律に反している可能性もある思想でないとしても,フェアな広告をしているとはいえないだろう。

 

そのような抗告をする業者が果たして誠実に債務整理を進めていけるかは別問題とはいえ、類似の業務を行う者として、不安を感じるのは余計なお世話だろうか。

 カテゴリー : 一般, 法律

現金が戻ってくる可能性2(「現金が戻ってくる」ことを強調するチラシについて)

前回(8月18日)のブログの続きである。

 

 

2 チラシの問題性①:優良誤認表示か?

   まず、前提として、「現金(過払金)が戻ってくる(可能性がある)」のは、
    ①遅くとも2010年6月までに借入(クレジットカード利用)していた人であり、
  かつ、
    ②現時点から遡って10年以内に取引が継続していた人に限定される。

 

   そして上記に該当する人は、2024年7月(当職がチラシを認識した時点である)現在においては,極めて限定されると言わざるを得ない(このことは前のブログで指摘した。)。

 

   ところがこのチラシでは,そのような限定はなくおよそクレジットカード利用者であれば全てが「現金が戻ってくる(可能性がある)」かのような表示がなされている。

 

   この点については、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」等という)の「優良誤認表示」(5条1項1号)あるいは「有利誤認表示」(同2号)に該当するとの疑いを否定できないものとと思料する。

 

  cf.不当景品類及び不当表示防止法
(不当な表示の禁止)
第5条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する

    表示をしてはならない。
  一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著

   しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務

   を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を

   誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
  二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは

   類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく

   有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による

   自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

 

   すなわち、景品表示法は、「一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示・・・す表示であつて、不当に顧客を誘引」する表示を規制するものである。

 

   本件では、およそクレジットカードを利用したものであれば多くの者にとって「現金が返ってくる」可のような表示であると認識できよう。ところが、実際には極めて限定された条件でしか「現金が戻ってくる」ことはない。

 

 このような可能性の低い役務(金融業者に対する過払金の返還手続)を前面に押し出した表示は「実際のものよりも著しく優良であると示すもの」といえるのではないだろうか。

 

  この点、「現金が戻ってくる(可能性がある)」者は限定されてはいるものの、前述した条件を満たせば過払金返還請求権を有していることは事実であることからすれば、チラシ主の役務が「実際の者より著しく優良」とはいえない、との考え方もあり得よう。あるいはチラシ主は「現金が戻ってくる」可能性がない人については、当該役務は発生しないとしてもその調査を無料であるから「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれ」という不利益を課するものではないと言うかも知れない。

 

  しかし、チラシ主のような過払金返還の手続をする役務の提供は、弁護士あるいは認定司法書士であれば誰でもなし得る業務である。

 

  そして、過払金返還請求が既に現時点においては、かなり限定された条件に該当しなければできないことは、弁護士らにとっては周知の事実である。その条件を明示することなく、およそクレジットカード等の利用者が全て現金の返還の可能性があるかのような表示をすることは、あたかもチラシ主だけがそのようなノウハウを有しているかのような誤認を消費者に対してまねきかねないと考えられる。(※)

 

 (※)「事業者間では常識とされているようなことであっても,それが一般消費者がおよそ知らないような事項であれば、当該事項について誤認が生じることがあり得る」(参考「景品表示法の実務」渡辺大祐著・第一法規40ページ)以上、かかる誤認が法的に問題とされうると考える。

 

  そうだとすれば、かかる表示は「実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」であるといえるのではないだろうか。

 

  以上より、本来返還される可能性がある「カードキャッシング利用者」は法律上明らかであるにもかかわらず,これを限定せずに「カードキャッシングのご利用経験があるあなたに」向けたチラシ広告は、一般消費者に誤認をまねく表示ではないだろうか。

                                                             (続く)

 

 カテゴリー : 一般, 法律

「現金が戻ってくる」可能性?

  最近、「現金が戻ってくる」と大見出しをうったチラシが入っていた。その広告には、対象カードとその過払金額がいくつもあげられている。

 

 このチラシは某司法書士法人が配布していたのであるが、同様な内容の広告をネット上でも見かけた方は多いのではないだろうか。同司法書士法人はテレビコマーシャルでも同様の広告をしているようである。

 

 果たして、このようなことが現実に可能か。仮に可能だとしてもどれくらいの可能性なのか。
 このチラシに何か問題はあるのか、と言った点を、これから本ブログで分析していきたい。

 

第1 過払金が発生している可能性は少ないこと

1 過払金は発生しているか。

 

   このチラシでは、大きく「現金が戻ってくる」との記載の下には小さい文字で「可能性があります」との記載もあるが、実際のところその可能性はどれくらいあるのだろうか。

 

  まずは、現金が戻ってくる根拠を考えたい。

 

2 「現金が戻ってくる」根拠

 

  先ずはこのチラシに言う「現金が戻ってくる」とする根拠であるが、借り入れた金額よりも返済した金額が上回る場合以外にはありえない。従前金融業者は利息制限法の上限を上回る金利で貸付をしていたことから、これが超過分を元本充当することにより、過払い金が発生することとなっていた。

 

  しかしながら平成18年に貸金業法の改正がなされ(平成22年6月に完全施行)、年利15~20%を超える支払についての「みなし弁済」を廃止し、出資法の上限金利を20%に引き下げたことにより、利息制限法の上限を超える金利での貸付は不可能となった。

 

  従って、遅くとも平成22年6月以降、金融業者からの貸付は、利息制限法の上限以内の金利によるものとなったため、超過利息の元本充当の余地がなくなり、過払金も生じないこととなった。

 

  そうすると、「現金が戻ってくる」可能性のある人は、遅くとも平成22年6月までに初回の借入をしていた人と言うことになるが、多くのクレジットカード会社は法律が施行されるまでに金利を見直していたと考えられるから、実際には平成18年以降に借り入れた方には過払金発生はないか、あっても極めて希少な額しか発生しないと思われる。

 

3 過払い請求権の時効

 

  また、注意すべき点がもう一つある。それは「過払金返還請求権の時効」の問題である。

 

  すなわち、ほぼ確実に過払金返還請求権が発生していると考えられるのは、法施行以前に借入をしており、かつそれ以降に約定どおりに完済した人である(債務を完済していない人でも過払金が発生していることはあるが調査・再計算しないと確実とは言いがたい。)。

 

  ところが、2024年現在では完済から10年を経過していることも多く、せっかく生じていた過払金返還請求権が時効により消滅している可能性が高い。

 

   そうすると結局、過払金が発生していたとしても、その返還請求権は時効により消滅しており、現金が戻ってくることはあり得ない。

 

4 あらためて過払金の発生の可能性について

 

  それでも法改正あるいは法施行から10年以内であれば、まだそれ以前からの借入と返済が多額に及んだ人がまだまだ存在しており、過払金返還請求が可能な事例は少なくなかったかも知れない。

 

  しかし、法律成立から18年、完全施行からでも14年も経ている2024年(現在)においては、もはや、「現金が戻ってくる」可能性は極めて低いと言わざるを得ないのではないだろうか。

 

  そうすると、このチラシ広告の狙いはどこにあるのだろうか。
  いったんここで一息ついて、別項で論じていこうと思う。

 

 カテゴリー : 一般, 法律

令和6年お盆の営業状況について

当事務所のお盆(8月8日~8月16日)の営業時間は

以下のとおりとさせていただきます。

 

1 平日は通常どおりの営業(9時から21時)いたします。

 

2 8月10日(土),11日(日)、12日(月祝)は午前11時から

  午後5時までの営業とさせていただきます。

 

3 電話でのお問合せは上記時間帯以外も随時受け付けております。

 

以上よろしくお願い申し上げます。

 カテゴリー : 一般, 法律

2024年の倒産件数、11年ぶり大台突破確実か

2024年の倒産件数、11年ぶり大台突破確実か/コロナ禍の手厚い保護「ゼロゼロ融資」の返済ピーク、中小企業に大打撃
https://news.yahoo.co.jp/articles/5c1cb8b3b23a82cab1dc062c6fb0ed04721a321f#:~:text=2024%E5%B9%B41%E6%9C%8817,%E4%BB%B6%E5%8F%B0%E3%81%AB%E9%81%94%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
(ヤフーニュースより)

 

まず、令和以降の倒産件数・負債総額は
以下のとおりだそうです。

 

 西暦(和暦)     件数    負債総額(円)
2023(令和5年)  8,690    2,402,645
2022(令和4年)  6,428    2,331,443
2021(令和3年)  6,030    1,150,703
2020(令和2年)  7,773    1,220,046
2019(令和元年) 8,383    1,423,238
(引用 https://www.tsr-net.co.jp/news/status/transition/)

 

2024年は、中小企業の倒産が11年ぶりに1万件を超える高水準になると予想されています。
コロナ禍が明けたにもかかわらず中小企業の倒産が増える要因ですが、コロナ禍の期間に受けていた、ゼロゼロ融資(実質無担保・無利子)などの返済期限がここに来て中小企業の重荷となって、資金繰りが困難になることが主たる原因と考えられるそうです。

また、人手不足なども売上げの不振に拍車をかけ、その結果返済が困難となるものと思われます。

 

業種別では、飲食業を含むサービス業が2940件(前年比41.6%増)で、増加率第1位だそうです。飲食業は零細企業が多く、コロナ禍で客足が途絶えてから、それが順調に回復しなかったことにも原因があると思われます。

 

飲食店の売上げが不振となって廃業するに当たり、当事務所に自己破産の申立を依頼されるというケースもあリましたが、今後はこういったケースが増えてくるのではないかと予想されます。
廃業に当たって債務超過に陥るケースであれば、やはり法的な整理をする方が良いでしょう。そのためには専門家による適切なアドバイスが不可欠です。

 

当事務所においても、飲食店の廃業に当たって、適切な債務整理の方法をアドバイスできると思いますので、お気軽にご相談くださいませ。

 

 カテゴリー : 一般, 法律

破産に至る浪費の類型について

自己破産の原因として一定の浪費がある場合は少なくない。
ではどのような浪費が多いのか。
当職が扱った事案の中から抽出してみた。

 

1 FX取引、バイナリーオプションなど
  最近浪費の類型として目立つのは、FX取引やバイナリーオプションと言われる取引である。

 

  これらの取引を詳細に紹介することはここではしないが、要するに、外国通貨の将来の為替変動(例えば,日本円-米国ドルの為替レート)を予想して、これを売買することで、予想通りの変動があれば為替差益を取得し、予想が外れれば為替差損を負担する、というものである。

 

  相場の変動は日々変化するものであり、その予想をすることは一般人にとっては容易ではない(どれだけ研究しようと、それは予想の精度を高める以上のものでしかなく、絶対に儲かる予想など不可能である。)。結局これらの取引はハイリスク・ハイリターンであり、また偶然の要素にかかってくるという点でギャンブル的要素は否定できない。従って、資金に余裕があるならともかく、生活資金等を投入してまでこれを行うことは明らかに「浪費」である。

 

  それにも関わらず、FX取引が確実に儲かる「投資」である(多くの業者の広告は「投資であるかのごとき」イメージを作出しており、この点にも問題があると考えている)との誤解のもとにこれらの取引に手を出して財産を減らし負債を抱えた人が確実に多数存在している。

 

2 ネット競馬など
  次に、多く見受けられるのは、ネット競馬や競艇などのインターネット経由で参加できるギャンブルである。違法カジノに手を出していた事例もあるようだ。

 

  これらのギャンブルの特徴は、極めて手軽に参加できるところにある。従来は競馬場や場外馬券場に行かなければ購入できなかった馬券がネット経由で購入できるようになり、これにはまる頻度は比較にならないぐらい高まっている。

 

  また一回あたりの購入額が少額でも購入機会が多数回に及べば多額の金銭が流出することになる。その結果、生活費を脅かすほどの出費により負債が増大していった人が多数存在している。

 

  ネットで手軽に購入できるという点では宝くじも同様であり、これを繰り返していた人もいる。こちらも少額で購入できることから少なくない頻度で購入している人もいるが、競馬等に比べてギャンブルの高揚感が少ないためか、支払い不能の主たる原因となったケースは少ない。もっとも、宝くじの場合も借金返済に苦慮している状態で繰り返し購入することが浪費となることは否定できない。

 

3 アイドル等の追っかけ
  アイドルの追っかけのために借金が増えたという事例もいくつか存在する。当事務所で取り扱った事案は全て女性であり、いわゆるジャニーズ系や韓流アイドルにはまった人たちであった。

  筆者も以前ローカル系アイドルのライブへしばしば通ったことがあり、その経験からすれば、アイドルの追っかけにはまる気持ちはわからないでもない。しかし、全てのライブやツアーに同行しグッズを購入するとなれば、その経済的負担は少なくない。そして、そういったことに嵌まるのは多くの場合収入も資産も多くはない若い女性であることから、クレジットカード等の利用を繰り返すうちに借金がかさんでいってしまうのである。

 

4 パチンコ
  最近、パチンコにはまったという破産者は減っているようである。その原因は、コロナ禍で店舗へ行くことを控えるようになったことや、より手軽なギャンブルが出てきたこと、パチンコでのリターンが規制により少額になったことなどがあると思われる。

  ただし、そうではあっても依然パチンコにはまって生活費を圧迫する事態に陥ったことが破産の原因とされるケースも存在する。町中に手軽にあるギャンブルとしては依然パチンコは健在であり、破産の原因となり得る可能性は否定できない。

 

 ・・・以上、これらは、お金をつぎ込んで得られるリターンの高揚感・期待感という点で一致している(※)

 

 ただ、競馬・パチンコ等、明らかにギャンブルとされているものよりも、FX取引のような「投資まがい」へ金銭をつぎ込むほうが、損をしたときの喪失感が多く、これを取り返そうとして深みに嵌る可能性が大きいようである。

 

  いずれにしても、嵌まってしまうことで破産に至る浪費の類型について紹介してみた。

 

(※)アイドルの追っかけで金銭的なリターンはないが、アイドルを応援することで彼らに顔を覚えてもらえたり、アイドルがメジャーデビューするといったことが,彼女たちへのリターンとかんがえられる。

 カテゴリー : 法律

債務整理事件における弁護士の面談の必要性(追記

 弁護士が債務整理事件(任意整理、自己破産、個人再生手続など)を受任するに当たっては依頼を受ける弁護士が、直接依頼者と面談しなければならないのが原則とされています。

 

日本弁護士連合会・債務整理受任のルールについて
https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/cost/legal_aid/saimuseiri.html
債務整理事件処理の規律を定める規程
https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kaiki/kaiki_no_93r.pdf

 

 このことからすれば、全国展開している事務所であっても、依頼者とは直接面談するのが原則であり、やむを得ない場合のみWEBやメール等の手段で連絡を取ることが容認されているのみです。

 

 当職が聞き及ぶところによると、受任後も含めて実際の面談を行わず債務整理事件を処理している法律事務所があります。また事務所での面談を行うものの弁護士自身はあいさつ程度で終わり、実際の事件内容の聴取は専ら事務員に任せているところもあるようです。

 

 こういった事務所が顧客のために債務整理を適切に行えていないとは限りませんし、実際に債務整理をお願いした方にとって満足のいく解決であったケースもあるでしょう。

 

 しかしやはり弁護士会の規定を遵守していない法律事務所に依頼されることは、以下のデメリットがあると思います。

1 実際に弁護士が面談していないことで,依頼者に連絡や報告が

 十分になされず、実際の債務整理の内容が把握できないまま、支払を

 継続する危険性があること。
2 弁護士が債務整理を担当しない事務所では非弁提携の可能性

  があり、その弁護士が弁護士会から業務停止等の懲戒を受けた場合、

  支払がストップしてしまう危険性があること。

 

 結局、弁護士が面談しないことで依頼者が自分の債務整理について残債務の状況や解決内容(破産申立が進んでいるのか、任意整理の場合どこまで支払いが完了しているのかと言ったような点について)について十分に把握できなくなったり、弁護士が懲戒にかかると依頼者の業務もストップしてしまいますので,これらの危険性をはらんでいることからすれば、債務整理(任意整理のみならず、自己破産や個人再生も含めて)を依頼される方は実際に弁護士自身が面談してくれる事務所へ依頼されるべきだと思います。

 カテゴリー : 一般

債務整理事案での面談の必要性

大手の金融業者が日弁連へ申入をしたとのこと。
 ↓↓↓
https://news.yahoo.co.jp/articles/bc172dcdc667205ad12b339f28295bab9f17adaa

確かに、当事務所へご相談に来られる方の中には
大手事務所にいったんは債務整理の委任をしながら、
いろいろな理由でこれを打ち切った人が
しばしば来られる。

その理由はいくつか見られるが
その中には確かに実際に弁護士が面談することなく
ネットや書面でのやりとりだけで受任している場合も
あるようだ。

また、それとは別に
そう言った事務所は法テラスの利用を扱っていないため
高額の着手金等の支払いが完了するまでは
手続を進めてもらえず、また着手金が分割で支払えなくなって
連絡が取れない状態に陥ってしまった人もいるようである。

その結果、
債務者と連絡が不十分となった結果
やむなく当事務所にたどり着くケースも見受けられる。

最近では
そう言った大手事務所から見捨てられた?人の
受け皿に当事務所がなっているかのような
印象も否定できない。

債務整理等を大々的に宣伝している事務所は
それだけ広告費がかさんでおり、また多くの事務員を抱えているため
人件費もかかっていることから、低コストでの債務整理は難しい。

当事務所の場合、
・債務整理(破産等も含む)の依頼を受けるには必ず
 弁護士自身が直接本人と面談する。
・収入等の少ない人については法テラス利用を積極的に
 進める。
・(法テラス利用ができない人で)着手金分割の方に
 ついては,申立手続に進むまで何度も面談を行う。
と言うかたちで債務整理を進めているが、このようなやり方では
多数の事件処理をすることはできないし、弁護士としても
コスト的にも能率が良いわけでもない。

それでも、当事務所がこの方式を続けるのは
弁護士自身の仕事として、債務に苦しんでいる人が
喜ぶ顔を直接見たいからに他ならない。

もちろん、相談者の中には,どう考えても
支払継続できないにもかかわらず、
「破産は嫌だ,債務整理をしたい」と希望する
人もいる。
そういう人には厳しい意見を言わざるを得ないこともある。
その結果、怒って帰る人もいた。

しかしそれでも実際に面談することで
最終的にその人にとって最善の解決ができるように
することを常に考えているのである。

 カテゴリー : 一般, 法律

令和6年のゴールデンウイークの執務状況

当事務所のゴールデンウイークの執務状況については以下のとおりです。

 

4月27日(土) お休みさせていただきます。

4月28日(日) 午後1時から午後5時まで

         (但し相談予約申込があれば左記時間外も調整いたします。)

4月29日(月) 同上

4月30日(火) 通常どおり営業します。

5月1日(水)  通常どおり営業します。

5月2日(木)  通常どおり営業します。

5月3日(金)  午後1時から午後5時まで

         (但し相談予約申込があれば左記時間外も調整いたします。)

5月4日(土)  同上

5月5日(日)  同上

5月6日(月)  同上

※5月3日から6日までは、ご相談の予約状況その他により、お休みさせていただくことがあります。

 

以上よろしくお願い申し上げます。

 

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