投稿小説と著作権
「Gocco」という小説投稿サイトがある。
ここに投稿された小説作品が、「無断でAmazonの『Kindle』や楽天の『Kobo』に電子書籍として登録されている。どうしたらいいか。」という相談があった。
相談時に確認すると、確かに、相談者がGoccoに投稿した小説と同じコンテンツが、Amazonで100円前後で「著者:TSK編集部」と言う名義で、電子書籍として販売されていた。
ほかにもこういった苦情や相談は出ていたらしく、「ガジェット通信」というサイトにもこの問題が報告されていた。
一方、Goccoの利用規約をみると
第6条 著作権その他の知的財産権
利用者は、投稿した文章、画像等の内容、およびこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条から第28条までに規定される権利 を含む)、その他の権利につ き、当社および当社の指定する者に対して、これらを日本国内および日本国外において無償で期限なしに非独占的に利用する一切の権利(第三者に対して再許諾 する権利を含みます)を許諾します。また、当社が指定する第三者に対して一切の権利(第三者に対して再許諾する権利を含みます)を許諾しないことを承諾し ます。
利用者は、当社および当社の指定する者に対して著作者人格権を一切行使しないことを承諾します。
とされていた。
しかしながら、この規約があるからと言って、著作権侵害や著作者人格権の侵害が否定されるとは言い難い。
なぜなら、
まず、当該利用規約は、サイトの末尾の規約欄をクリックしてはじめて表示されるようであり、投稿の際に確認として規約が明示されているわけではない。実際相談に来られた方も、上記の規約を全く知らなかった。
また、上記がジェット通信が指摘するように、同規約からも、有償で販売することまで許諾する趣旨は見あたらないし、投稿者と異なる名義での著作者名表示をしている点は、著作者人格権たる氏名表示権(著作権法第19条)の侵害をまぬがれないと考えるのが妥当である。
さらに、私が利用規約を確認した時点では、GOCCOの運営主体として、
「(株)サイトクリエイト」 との表示がなされていた。
(現在は「Gocco運営事務局」と言う、これまた正体の分からない表示となっている。しかし相談を受けた4月22日時点では上記の表示であったことは確かであり、ガジェット通信にも、「『Gocco』運営元のサイトクリエイト」と表示されている。)
ところで、上記「(株)サイトクリエイト」なる表示はそう言う名称の株式会社があるかに見えるが、実はその様な名前の会社は存在しなかった。
このような主体の明らかではない「利用規約」が掲載されているだけで、著作権等に関する投稿者の同意があったとみることはできないと考えられる。
従って、投稿者の方々が著作権侵害であると問題視することは当然のことといえよう。
問題は、誰が無断使用したのかである。
上記の「TSK編集部」という名義は全く正体が不明である。
ただし、Goccoの投稿からの利用であることは明らかであるから、Goccoの運営者が何らかの関与をしているとみるべきであろう。
一方、Goccoの表示から、実際の運営会社は容易に分からないのだが、Goccoについてwikiペディアで調べると、
「2012年 4月2日 にSNSサイトGocco.jpの運営は株式会社サイトストックに事業譲渡それに伴い利用規約が改定された(ただし内容に変更なし)」とあり、「株式会社サイトストック」がGoccoの運営主体であるらしいことが分かった。
Gocco-wikiペディア
4月03日 【重要】運営会社変更のお知らせ
(なお、株式会社サイトストックであるが、同社のサイトに掲載されている「所在地」は、同社の登記簿上の本店ではない。)
サイトストック会社概要
以上からすれば、今回の件に関しては、Goccoの運営主体である、株式会社サイトストックが何らかの関与をしていると考えられ、同社の対応について注目されるところである。
もし、今後も同社あるいはGoccoから何らの対応や意見表明がなされないのであれば、自分の作品が知らない人によって有償で販売されていることを容認できる人を除いて、今後Goccoに投稿することは控えた方がよいのではないか。