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 カテゴリー : 一般, 法律

現金が戻ってくる可能性?(その3)

3 チラシの問題性②:おとり広告の可能性

(1)過払金返還請求権を有する者の掘り起こしを目的とする?

 

  この点、おそらくは、この司法書士法人に依頼する人のほとんどが多重債務に陥っており、そのような人がこのチラシを見て「ひょっとして私の場合は?」と問合せをしてくるのだろう。

 

  しかし実際には過払金は存在しないか、あったとしても他の負債をあわせると「焼け石に水」といった状態であることがほとんどではないか。

 

  つまり、「現金が戻ってこない」多数の人たちが「現金が戻ってくる」というワードでこの広告により問合せをしてくるのだろうと考えられる。

 

   この視点から当該広告に更なる問題はないか。

 

(2)私は、このような手法は「おとり広告」に該当する恐れがある。

 

   すなわち、おとり広告とは、商品や役務を購入できるかのように表示しているが、実際には販売できる可能性や販売する意思がないことにより、消費者が表示された商品等を購入できないにもかかわらず、一般消費者がこれを購入できると誤認する恐れのある表示(広告)をいう。

 

   このようなおとり広告は、景品表示法においても不当表示としての規制を受ける。

 

   なぜかというと、このような表示は、表示された商品や役務に関心を持つ消費者を誘引した上で実際に販売する他の商品等を売りつける手段として用いられるからであり、かかる行為が一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するからである(西川康一編著・「景品表示法」第6版(商事法務)171ページ)。

 

   具体的には、どのような表示が「おとり広告」となり得るかが公正取引委員会の告示により定められており、具体的な運用基準も決められている(変更:平成28年消費者庁長官決定「『おとり広告に関する表示』等の運用基準」)。

 

cf.おとり広告に関する表示

 一般消費者に商品を販売し、又は役務を提供することを業とする者が、自己の供給する商
品又は役務の取引(不動産に関する取引を除く。)に顧客を誘引する手段として行う次の各
号の一に掲げる表示

 一 取引の申出に係る商品又は役務について、取引を行うための準備がなされていない
  場合その他実際には取引に応じることができない場合のその商品又は役務についての
  表示
 二 取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、
  その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示
 三 取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たり

  の供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない

  場合のその商品又は役務についての表示
 四 取引の申出に係る商品又は役務について、合理的理由がないのに取引の成立を妨げ
  る行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品又は役務に
  ついての表示

 

(3)さて、本チラシ広告の内容は、過払金返還請求権の調査とその請求代行をサービス内容とするものである。

 

   しかしながら、実際に過払金返還請求代行は,上記のようにほとんど可能性がなくなっていると考えられる。にもかかわらずかかる広告を続ける理由は、債務整理が必要な人たちを掘り起こすためではないかと私は考えている。

 

   そして、かかる広告は、「2012年以前からの借入をしていた人」という、極めて限定された人しか役務(過払金返還請求の代行)提供できないことは明らかである以上「取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示」に該当すると考えられる。

 

   世の中に多重債務者があふれており、その整理が必要な人はたくさんいる。そう言った人の大部分は本来返金の可能性などないのであって、そういう人も含めて「自分もそうかもしれないという」誤認を与える当該広告はやはり、おとり広告として不当な表示と言えるのではないだろうか。

 

 

   また、法律上の問題を置いても,明らかに「現金が戻ってくる」可能性のない人(それは最近借入をした人であれば明らかであろう)をも誤った希望を与えるのは、道義上も不当であろう。

 

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以上、3回にわたって、かかる広告チラシの存在とその問題性について考察してみた。

 

もちろん結果として,現金が戻ってこないし、債務も減らないことが分かった人が,債務整理を弁護士や司法書士に依頼することが問題というわけではない。

 

しかし、本来、そのような可能性は明らかに見当たらない人まで対象にした広告をするような業者は、景表法といった法律に反している可能性もある思想でないとしても,フェアな広告をしているとはいえないだろう。

 

そのような抗告をする業者が果たして誠実に債務整理を進めていけるかは別問題とはいえ、類似の業務を行う者として、不安を感じるのは余計なお世話だろうか。

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