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 カテゴリー : 一般, 法律

債務(任意)整理で大丈夫?(その1-1)

 借金問題でお問い合わせをされる、あるいはご相談に来られる方の多くが、
任意整理を希望されます。

 

 しかしながら、債務整理というのは、基本的に今までの債務を各債権者との
交渉により支払金額や支払方法を軽減してもらって支払う、と言うものです。

 ですから、任意整理の場合、債権者に受け入れてもらえる範囲で
「債務者が支払うことのできる金額を支払うことのできる方法で支払っていけるか?」
を検討することになります。

 

1 債務整理において検討すべき要素
(1)債権の内容と債務者側の事情
   借金問題で相談に来られる方は様々な事情を抱えておられますが、解決方法

  の選択として大きな要素は、債権の内容等と債務者側の事情とに分けて考える

  ことになります。

 

   具体的には、
   1 まず債権内容については
   ①借金の額(債務額)
   ②債権者の人数(債権者数)

   2 ご相談者側の事情として
   ①ご相談者の収入
   ②ご相談者の財産・その他(親族等からの援助の可能性)
  がそれぞれ大きな要素です。

 

(2)債務額について
   まず、1①(債務額)については、任意整理が可能かどうかの基本的な要素です。
  債権者にいくら支払うことになるのかは、原則として債務額が基準となるからです。

   以前は、貸金に関しては利息制限法を超える金利(グレーゾーン)でもって金融
   業者に利息を支払っており金利を再計算することで名目上の債務額よりも低い

  金額の元本のみ支払えば足りるケース(過払金が発生しており債務が消滅している

  ケースも)が多くみられたのですが、2010年6月以降、貸金業法の上限金利が

  下がったことから元利金の不一致がなくなり、債務額(元本額)に齟齬が生じる

  ことはなくなりました。

 

   その結果(計算間違い等を除いて)債務額を法律上減額できる根拠はなくなった
  ことから、債務者が元本額の減額を求めることは困難な状況となりました。

 

  以上からすれば、おおむね,相談者の方が自覚している債務額と,債権者が把握
  している債権額はほぼ一致していることになりますので、任意整理の場合の

  支払総額は、基本的には債権者の請求金額と言うことにならざるをえません。

 

(3)支払方法:分割の場合
   多くのクレジットカード会社や銀行系のローンは、概ね合意時点における債権額
  (元本+その時点までに発生した利息・損害金)について、5年(60回)

  以内の分割での支払いを希望します。
   (※)任意整理の場合、将来の利息・損害金(すなわち債務整理の合意から完済
        までに発生する利息・遅延損害金)は約定通り支払っている限りにおいては、
        発生しません。

 

   したがいまして、任意整理の場合、
      毎月の支払金額=債権者の請求金額÷60

  を基準にそれが可能かどうかを考える必要があります。

 

   たとえば、300万円の債務がある場合、これを分割で支払っていくとすれば、

      3,000,000÷60=50,000

   すなわち、毎月5万円ずつ支払っていけるか?を検討することになるわけです。

 

                                              (続く)

 カテゴリー : 一般

令和元年のお盆の相談受付について

お盆期間中の、当事務所の相談受付は

以下の予定となります。

 

8月10日(土)  11:00~16:00

8月11日(日) 13:00~18:00(当日午前中までの予約が必要です)

8月12日(月)  全休

8月13日(火)  10:30~19:00(当日の予約受け付けます)

8月14日(水)  13:00~18:00(当日午前中までの予約が必要です)

8月15日(木)  10:30~19:00(当日の予約受け付けます)

8月16日(金) 10:30~19:00(当日の予約受け付けます)

8月17日(土)  11:00~16:00(当日午前中までの予約が必要です)

8月18日(日)  11:00~14:00(前日までの予約が必要です)

 

以上よろしくお願い申し上げます。

 

令和元年盛夏 弁護士尾崎博彦

 カテゴリー : 一般

平成31年~令和元年のGWについて

平成から令和にまたがるゴールデンウイークですが、

当事務所の業務日程は以下のとおりです。

(○は業務しております。×は休止しております。)

平成31年

 4月27日(土)  ○(ただし、11時~16時まで)

 4月28日(日)  ×

 4月29日(月祝)  ×

 4月30日(火)  ○

令和元年

 5月1日(水)     ○

 5月2日(木)     ×

 5月3日(金)     ×

 5月4日(土)     ○

 5月5日(日)     ×

 5月6日(月)    ○

 

通常のゴールデンウイークならば30日、1日、2日は

平日となる場合がありますが、ほぼそれに即した形での

スケジュールとなっております。

 

なお、お電話でのお問い合わせは、上記休業期間中でも

可能です。

 

以上よろしくお願い申し上げます。

 

 カテゴリー : 一般

債務減免調停について

北海道地震で初の債務減免 救済制度使い調停成立

https://www.bengo4.com/lawyer/mypage/news/articles/20744/?id=124868&utm_campaign=website&utm_source=sendgrid.com&utm_medium=email

 

地震で全壊となった住宅にローンが残っていても

法律上はこれを全額支払わなければならない。

 

これに対して、自然災害で住宅を失い、そのローンを負担しながら

新たな住宅を入手することは困難であるし、また債務者に酷でもある。

 

この記事によると、
災害救助法の適用を受けた地域で住宅や事業などのローンが払え
なくなった被災者が対象とする減免制度が策定されており、これ
を利用しての調停によるものだそうである。

 

こういう制度が阪神大震災の時も策定してなかったのかは疑問だが

いずれにしても、住宅ローンの2重負担が避けられる制度が

より周知されてほしいものである。

 

 

 カテゴリー : 一般

クレジットカード対応いたしました!

本日(平成31年2月22日)から、

クレジットカード端末を導入しましたので、

カードでの支払いをご希望の方についても対応できます。

 

ただし、当面は相談料のお支払のみとさせていただきますので

ご留意くださいませ。

 

より皆様の利用しやすい法律事務所へ努力いたしますので

今後ともよろしくお願い申し上げます。

 カテゴリー : 一般

「平成が終わる記念」商法、だと?

 こういう罰当たりな商法がのさばってきつつあるそうである。

 

「平成が終わる記念」商法に注意 高額で皇室写真集売る

 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190207-00000074-asahi-soci

 

天皇陛下が、悪質商法をお許しになろうはずがないではないか!

徹底的に封じ込めてほしいものである。

消費生活センターには啓発に努めてもらいたい。

 

 

 カテゴリー : 一般

アメブロも見てね。

事務所のブログでは、あまり書かないような砕けた内容は

こちらで書いてみようと思います。

 

興味のある方は是非!

https://www.ameba.jp/home

 カテゴリー : 一般

小説『著作権は誰のもの?」(その3)

(その2より続き)

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 少し、大崎が考えを巡らせはじめ、また山川からも質問がないことから一瞬の間が開いた。

 

 その様子を心配そうに、鈴木はうかがう様子で、
「あのーそうすると、うちの頼んだのは河合さんところで山川さんが撮影したものですから、

相手のいう写真を使っていないわけですから、著作権侵害なんてあるのですか。」
と大崎に質問した。

 

大崎は
「そうですね。この場合、写真の著作者は基本的には撮影者に帰属しますから、

写真自体がどんなに似通っていても違う人が撮影したものであればそれぞれ独立した著作物であって

一方が他方の写真を侵害したということはあり得ないといえます。
 まずは、パクパクペッパーのサイトの写真が、山川さんの保有しているデータを加工したものであって、

相手の写真を流用したものではないことを説明する必要がありますね。

 

 ・・・うーん、この写真と相手のパンフレットの写真を見比べてみたら、ややアングルが違いますね。

後ろに映っているコンロの配置もやや違うようです。この点からも、写真が違うということを

アピールできるのではありませんか。」

 

鈴木はやや弾んだ声で
「ああ、本当だ。よく見ると写真自体が違うものだ!

じゃあ違う写真である以上、うちが著作権を侵害したことにはならないのですね。」

 

といったが、横にいた山川はなおも心配そうに、

 

「でも先生、ギュウジュウハウスが『うちはお宅には撮影許可は出していない。』

と言い出しても大丈夫ですか?

うちの河合がどんな許可を得ていたかなんだか心配で・・・。」

 

と食い下がってきた。それを聞いて鈴木はまたシュンとなった。

 

大崎は、
「撮影許可を得ていたかどうかと、その写真が誰かの著作権を侵害したのかは別の問題です。

この場合、写真を撮影したのは山川さんですから,通常は山川さん,あるいはその上司の河合さんか、

すでにサイトで使用しているので鈴木さんに著作権が認められます。

この写真が、パンフレットの写真の著作権を侵害しているかどうかが問題となっているのですが、

撮影許可を受けていたかどうかがこの問題に関係するとは考えられません。」
と答えた。

 

続いて、

「そもそも、ある写真の著作権を侵害したといえるには、その写真のデッドコピーでない限り、

他の写真がそれを『真似をした」といえるものでなければなりません。

すなわちオリジナルの写真を認識して、それに似せようとしたという意図のようなものが必要で、

たまたま誰かの写真と同じような写真ができたというのでは

著作権侵害にはなりません。

今回の山川さんの写真は、肉の焼いている写真を撮影していたとき、たまたま別のカメラマンが

同じ被写体の撮影をしていたわけであって、そのカメラマンの作品の著作権を

侵害したことにはならないといえます。」

 

鈴木は今度こそほっとしたように、
「じゃあ、うちの写真は山川さんの撮影したもので、アールデザインの写真とは関係ないと

言ってやっていいのですね。」

 

大崎は、
「このケースの場合は、おそらくその主張で大丈夫でしょう。

これを前提に反論の回答書を作成しましょう。その上で何かありましたら、対応を考えますので。」
と申し述べた。

 

鈴木は「先生、よろしくお願いします。」

 大崎は早速、アールデザインの代理人弁護士宛に反論の書面を、

写真の相違点の指摘とともに送付した。

 

 その後、大崎のもとへ、相手方からは何もいってこなかった。

 

 鈴木は回答書を送付してもらってから1週間に1回くらいは、大崎にどうなっているかの問い合わせを

行っていたが、大崎からは「特に何もいってきてませんよ」との返事の繰り返しだった。

 

****************************************

 

最初の相談から3か月位たった。

大崎に「これくらい何もいってこなければ、おそらく写真の件については諦めたのでしょう」

と言われたこともあって、

鈴木は「やれやれ、わしもこれで安心できるな」ということになった。

 

 以上が、焼き肉写真騒動の顛末である。

 

                                  (了・・・ただし解説で補足します。)

 カテゴリー : 一般

小説「写真は誰のもの?」(その2)

(その1より)

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(・・・明日か。午後3時からならなんとか空いているな。)

 大崎は日誌を見ながら、調整可能な日時を切り出した。

 「鈴木さん、私も写真の載ったチラシを見たいなあ。

 ・・・じゃあ明日の午後3時はいかがでしょうか。
 その日にチラシと写真データも持ってきて頂けるとありがたいのですが。
 また、そのデザイナー事務所の関係者、えっと河合さん?は呼ぶことができませんか。」

 

「ええ、河合さんは、自分が無理なら担当者だった山川のどちらかがいつでも事情を

説明にうかがうと言ってます。」

 

「じゃあ、そのときに河合さんか山川さんも都合がつくかも調整して頂いて、

ご同行頂けるなら、ありがたいです。」

 

「分かりました。では先生、明日の午後3時にうかがいます。」

 

 電話を切ってから大崎は,どんなチラシだったのだろうか、とか、肉の写真はどこで入手したもの

だったのだろうか、などとデスクの前の椅子に座ったまま、ただ考えをめぐらしていた。

 

 翌日、応接室に通された鈴木は、大崎が入室すると、まるで久しぶりに飼い主にあった犬のように、

大崎へチラシを見せながら、

 

「この真ん中の肉の写真が違法だと言うんです。」
と切り出した。

 

 チラシには、おいしそうなステーキの写真が中央にあり、上側部分に

『○月○日開店!パクパクペッパー』

とのポップ文字が入ったものであった。

 

 鈴木は、
「このチラシと同じ写真を前面に出したホームページを立ち上げてまして、

これも公開しているんです。

あ、店の名前は会社名をアレンジして『パクパクペッパー』としました。

・・・そしてこれが弁護士からの通知書です。」

 

 大崎は、矢継ぎ早に資料を机の上においてしゃべる鈴木に面食らいながらも,

「まあまあ、鈴木さん落ち着いて。そちらの方も紹介して下さいよ。」

と鈴木の横に立っている男性の紹介を求めた。

 

 鈴木は、
「この写真ですが、昨日電話で言ったように,デザイン事務所に『美味しそうな肉の写真を

どーんと載せてくれ』と頼んだのですが、担当者の山川さんがこの写真データを収集して

チラシにレイアウトしたと聞いたので、山川さんに来てもらったわけです。」
と言い、さらに続けた。

 

「元々河合さんのデザイン事務所は、サラリーマン時代の同僚から紹介してもらったことが

きっかけだったんです。」

 

「山川」と紹介されたその男性が、大崎に名刺を渡しながら
「どうも、今回は思いがけない形でニクニクペッパーさんにご迷惑をお掛けしたみたいで。」
とお辞儀をした。

 

 名刺交換を済ませ大崎は、鈴木と山川に椅子へ座るよう勧めたあと、弁護士からの通知書に

目を通しはじめた。

「なになに・・・。要するに『貴社の配布したチラシに掲載されている写真ですが、この写真は

当社の従業員である岩田某が撮影したものであり、これを貴社のチラシに許可なく掲載したものです。

よって、かかる写真が含まれているチラシの廃棄、ホームページでの写真の掲載中止、及びこれを

配布したことによる損害賠償を求めます。』ということですか・・・。」

山川は、内容証明郵便とは別に送付されてきたという、写真が掲載されていたパンフレットを

さらに取り出した。

 

パンフレットには「ギュウジュウハウスのご案内」とタイトルが入っており、ページをめくると、

表紙裏には大きく肉の焼かれている写真が飛び込んできた。

「このパンフレットの写真が、うちの写真とよく似ているというのです。」

 

 大崎は山川に
「このパンフの写真と、どの写真が同じだといわれているのですか。山川さんこの写真はどこで

入手したものなのですか」
と質問した。

 

 山川はまずチラシの背景になっている写真を示し、「これです」と答えた。
「この写真は、私が知り合いの焼き肉チェーン店で撮影したものがもとになってます。」 

 

「その、知り合いの焼き肉チェーンというのは・・・」
 大崎がさらに尋ねると、山川は、すぐさま答えた。

「実は、この『ギュウジュウハウス』なんです。

うちのボスから『許可は取っておいたから撮影に行ってこい』

といわれて、焼いているステーキの写真を撮らせてもらったのです。」

 

「そうすると、ギュウジュウハウスの肉の写真だけれども、内容証明郵便に書いてあるように

「アールデザイン株式会社」が撮影した訳ではないということですね。」

 

「はい、ただ撮影に行った日に、同じ店に別のデザイン会社の担当者も来ておりました。

同じステーキの写真をそこで撮影していました。

それがこのデザイン会社だったのかもしれません。」

 

 大崎は、
「そうすると、同じステーキを、同じ日にそのデザイン会社の担当者が

撮影していたということなんですかね。」

とさらに突っ込んだ。

 

 山川は、
「ちょっと待ってください。手帳を・・・。」
といいながら背広の内ポケットから手帳を取り出した。

 

「あっそうですね。この日にお店へ行ってます。」

 

 ・・・大崎はちょっと黙って天井を見上げた。そして考えを整理するかのように、

山川に再度質問した。

 

「山川さん、ところであなたが撮った写真の元データはお持ちな訳ですね。

ほかに何枚かとられたのですね。」

 

「はい、当然持っています。ほかのデータと一緒です。中にはステーキだけでなく、

焼いているシェフの姿も撮影したものもありますが、そちらはホームページに使っておりません。」

 

「ところで、ステーキの写真撮影の許可は、もらってましたよね。」

 

「ええ、現場で特に許可を得るというようなことはありませんでしたが、ボスからは許可をもらったと

言われていました。

また、私が撮影しているときに、焼いている店のシェフから撮影していることは

知っておられたと思います。

そのときは何も言われませんでしたよ。」

 

「河合さんはどういう許可をもらったとおっしゃってましたか。」

 

「そこなんですがが、ボスに聞くと『マーケティングの資料にしたい』とギュウジュウハウスの

オーナーにお願いしたらしいのですが、キチンとした形で申し出たわけではなかったようです。

・・・ボスは,ギュウジュウハウスのオーナーと飲み友達だということで、どうも飲み会の席で

  今度うちの写真が行くからよろしく、といったような感じです。」

山川の口調には、ややボスの河合を批判するようなニュアンスであった。

 

大崎は
「山川さんが撮影された写真は持ってこられてますか。」
となおも尋ねた。

 

「ホームページに用いた写真は持ってきました。・・・これです。

私のパソコンの専用フォルダに

保管してありますので、それをプリントアウトしました。」

といって山川は手持ちのノートパソコンを開き、「パクパクペッパー」の

サイトを立ち上げた。

 

そして、肉が焼かれている写真が、手元にプリントアウトした写真と

見比べられるように、

テーブルを挟んで座っている大崎にも両者が見えるようにこれを示した。

 

 

 確かに、ホームページの写真は肉が焼かれているのがおいしそうに写っているが、

紙に印刷してきたものはパソコンのデスクトップよりはややくすんで見えた。

                                                   (続く)

 カテゴリー : 一般

小説「写真は誰のもの?」(その1)

以前、友人の弁理士さんと、知的財産その他に関しての弁護士と弁理士の

融合した事例についてのアドバイスをする書籍を書いてみようということになり、

まずは、小説仕立ての設例を作ってみることにした。

 

まだ、書籍として本格的なものにはほど遠いが、著作権侵害との関係で

それらしきものができたので、3回程度に分けて,ここに掲載してみる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 その日、帰り支度をしていた大崎の事務所の電話が突然鳴った。

 

 弁護士の大崎は個人の顧客からの相談が多く、離婚や借金の相談、果ては単なる

悩み事としか言えないような相談まで舞い込んでくる。

 そのような状況で多忙な毎日を送る大崎であったが、その日は夕方までの仕事がうまく

片付き、珍しく早く帰れるな、等と思っていたところに、見慣れない電話番号からのコール

であった。

 その電話は、昔、離婚の相談に乗ってあげたことのあった鈴木氏からのものであった。

 鈴木氏は、元々サラリーマンをしていたが、一念発起して以前からの夢であったステーキ屋を

開業するために、会社勤めのために開業資金を貯め続けて、やっとお店がもてる程の資金が

貯まったということで、5年前に大阪の肉料理屋の従業員として転職し、そこでの修行後、

現在、「ニクニクペッパー株式会社」という会社を立ち上げ、関西地域でステーキの新規出店を

検討している、ということであった。

 

「先生、その節はお世話になりました。実は、今度、うちで立ち上げたステーキハウスのことで

相談があるのですが」

 

「アア、鈴木さんですか。ご無沙汰しています。その後は独身貴族を謳歌されているんでしょ、

良いですねえ(笑い)」

 

「いやあ、そろそろ年も年ですし再婚したいと思ってるんですよ。

 それはともかく、今度会社を立ち上げて、ステーキハウスを開くことになりまして…。」

 

「それはそれは・・・確か、以前は運送会社にお勤めでしたね。

よく独立して会社をおこす気になりましたね。」

 

「いつまでもサラリーマンというのも先が見えてきましてね。ちょうど子供の養育費の支払いも

なくなりましたし、ここらで一旗揚げようと、がむしゃらに働いたことで資金も貯まりましたので

思い切って店をやってみようと思ったのです。」

 

「なるほど、起業は男のロマンですか。」

 

「以前から飲食店をやりたいと思っていたのです。それでやはり男はステーキじゃないかと(笑)」

 

「ステーキだけにステキですね」

 

「(笑)、ところでちょっと一つ問題が起こりまして」

 

「どういったことでしょうか?」

 

「著作権違反の問題が出たのです。」

 

「というと?店の出店がなぜ著作権と関係するのですか。」

 

「いやそれが、実は、出店場所も決まって、内装工事もほぼ終わり来週には開店予定なんですが、

集客のためにチラシを作ろうと思いましてね。とあるデザイナー事務所にチラシ作成を頼んだんです。」

 

「ふむ、それで?」

 

「チラシには店舗の写真の他、どーんと肉の焼けている写真が欲しいと思ったのですが、

そこのデザイナー事務所さんが、『肉の写真は任せて下さい』と言ったので、おまかせすることとし、

チラシのサンプルを作成して持ってきました。
 私はなかなかデザインが良かったし、写真も気に入ったのでこれを直ちに印刷に回し、来週の開店に向けて、

先月梅田の繁華街でチラシを配ったのです。」

 

「チラシも配って、評判も上々なら問題ないじゃないですか。」

 

「私も最初そう思っていたのです。ところがチラシを配り始めて1週間後に、突然、弁護士名で

何かチラシの配布をやめろ、損害賠償しろ、という通知書が届きましてね!

・・・よく読むと、肉の写真が著作権違反じゃないかなどと書かれてまして、びっくりしたのです。」

 

「デザイナー事務所には連絡しましたか?」

 

「ええ、もちろん。

 そこの事務所の代表が河合さんというのですが、彼に直接連絡をしましたところ、

『いや、アレはうちの社員の山川が写真の担当だったので、そいつに任せたところ、

写真データを持ってきたので、チラシにレイアウトするようにした。』というのです。」

 

「なるほど、そうするとその写真がどこで撮影されたものかと言ったことは,

 鈴木さんは直接知らないんですね?・・・どちらにしても、そのチラシを見てみたいなあ。」

 

「先生、通知書には『○○月○○日までに回答がなければ、法的手段に訴える。』と書いてありますので、

何とか近いうちにまでにご相談に伺えませんか。」

 

 なんだか最初の陽気な声から、鈴木氏の声は今にも泣きそうな声に変わっていた。

 

 大崎は「確か以前に離婚の相談を受けた時もこんな感じだったな」

などと思い出しながらも、少しかわいそうな気になってきた。

                                                    (続 く)

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