弁護士倫理の教育と法科大学院
先日、アディーレ法律事務所の所属弁護士が懲戒になった旨の広告が自由と正義に掲載されていた
(処分は2018年10月)。
その内容であるが、
1 当該弁護士は、依頼者女性Aからその夫Bの不倫相手Cに対する慰謝料請求事件を受けた。
2 AB間の婚姻関係は破綻に至っておらず、受任時には不貞行為を裏付ける証拠も必ずしも
確定的なものではなかった。
3 その状態で、当該弁護士は「受任通知」をCに送らずに、多数回に渡ってもCの携帯電話宛て
に電話をかけるなどし、その際に「誠意が見られなければ教育委員会に通告することも検討してい
る」などと伝え、
4 およそ裁判では認められがたい金500万円もの請求をした。
というものである。
まるで反社会勢力のような物言いをしていたかの印象を受けるかのような記事もあった。
https://blogs.yahoo.co.jp/nb_ichii/36771246.html
これに対するネット上の反応であるが、熱心さのあまり行き過ぎたというような評価を
する向きもあるようた。
しかし、ここで問題とすべきなのは、たとえ「熱心さのあまり」であっても、こういう交渉方法が
弁護士としての品位に反して、明らかに倫理違反に該当することが、十分に理解されていない
ということではないだろうか。
弁護士は法律家である。そうである以上、交渉に臨むに当たっても単に依頼者の要求を
手段も選ばずに通せばよいというわけではない。
ましてや、およそ本人の言い分のみを前提に、通常は認められない金額の請求を
することは、慎重でなければならない。
依頼者の希望をできる限り実現させてあげるにしても、なおのこと、相手方を畏怖させたり
困惑状態を利用しての示談活動など決してしてはならない。
これらは弁護士としての活動の基本である。中にはベテランになってもこのことがわからない
弁護士も見受けられるが、件の弁護士はまだ若く、経験も不足していると思われる。
ようは、こういった行為が弁護士倫理上問題であることを理解していないのであるが、
法科大学院の段階ではおよそ教育されてこなかったのではないか。
この程度のことすら、法科大学院で教わることもなく、法的知識も倫理も不十分なままで
弁護士として送り出しているのである。
この点からしても、法科大学院のシステムが法曹養成として失敗であるといわざるを得ない。
(文責 尾崎博彦)