父子関係の推定とDNA鑑定
前にも同じようなことを書いた気がするが、最高裁での一応の決着を見たこともあるので、再度コメントしてみたい。
血縁なしでも「父子」 最高裁が判決覆す 関係取り消し認めない判断 http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/140717/evt14071715540030-n1.html
父母が婚姻中に生まれた子供について、後にDNA鑑定により その父親の子供でないことが明らかとなった場合、法律上の 父子関係はどうなるのかといった点についての、最高裁の 判断が最近なされたようである。
これによると、最高裁は,要するに DNA鑑定により生物学上父子関係が認められないことが判明した場合であっても 民法772条により法律上の父子であるとの推定を覆せず、父子関係を取り消すことは できないとしたものである。
民法772条では「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」(嫡出推定)と定めており、これが法律上の父子関係を確定する根拠の条文である。この推定を覆すには、嫡出否認の訴えを起こす必要があるが、訴えを起こせるのは夫だけで、提訴期間も「子の出生を知ったときから1年以内」に限られる。
そこで、嫡出否認の訴えが出来ない状態に至ってから、なお772条により推定された法律上の父子関係を否定することが出来るかという点が問題となる。
この点、妻が妊娠した時期が夫の海外単身赴任中であったような、夫との性交渉がなかったことが客観的に明らかな場合には、この推定が働かないとされているが、DNA鑑定といった手法で生物上の父子関係が否定された場合などは、立法時に想定されていなかったことから生じた問題と言える。
この点については、「法的安定性」と「真実の発見」のどちらを重視するかという政策判断とも言える。 その上で最高裁は、結論として前者を選んだと言うことになるが、裁判官の中でも意見が分かれたということなので、価値判断としては微妙なものがあったのだと思われる。
最高裁の判断の妥当性については、私自身は評価を決めかねている。
ただ一つ言えるのは、 おそらくDNA鑑定が「法的な」意味での父子関係の確認方法として確立していない、と言うことが、かかる結論に至った大きな要素ではないかと考える。
もし、法律上の父子関係の確定にDNA鑑定の結果を取り入れるようにするのであれば、単に鑑定結果を提出するだけでは足りず、鑑定の方法や手順などについても法律で確立させることが必要ではないかと思われる。