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 カテゴリー : 一般, 法律

「後出しマルチ」にご用心!

今度、マルチ商法関連の講演?をすることになったので、

あらためて「連鎖販売」について勉強し直しているのだが、

思ったよりも、未だマルチ商法被害が多岐にわたり、

かつ深刻なものであることを認識せざるを得ない。

 

国民生活センター2014年5月8日:

公表 「相談急増!大学生に借金をさせて高額な投資用DVDを購入させるトラブル」

http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20140508_1.html

 

・・・1年も前に公表されている事案を把握していなかった

  不明を恥じるばかりだが、ここからは、本来

  「のぞみもしなかったのに、マルチ商法の片棒を担がされてしまう」

  危険性があることが示されている。

 

  このトラブルであるが、以下のような経緯をたどると推測される。

 

1 被害者は主として大学生である。彼をA君と呼ぼう。

   あるときA君は、喫茶店等に、友人や先輩に呼び出される。

 

 

   おそらく、

   「いいアルバイトを紹介する」

   とか、

   「事業に成功している先輩を紹介する」

   とか言って呼び出すのであろう。

 

 2 A君が喫茶店に行くと、その友人あるいは先輩から投資用

   DVDを購入するように勧誘を受ける。

 

   投資用DVDは、かなり高額で数十万円もするのだが、

    「これを見て実践すれば必ず儲かる」

    「今購入しておけば、君の人生がバラ色になる」

   とか何とか言って勧誘されるのだろう。

 

3 当然、大学生のA君にはそんなお金はないわけであるが、

  これについては、サラ金やクレジットカードの利用をすすめて

  購入させようとする。

 

   学生の場合、サラ金は本来貸付が出来ないにもかかわ

  らず、本人にうそをつかせて借金をさせ、現金で投資用DVDを

  購入させてしまうわけである。

 

4 契約させられた彼には、ほとんど無価値(実際には儲からない)

  のDVDと借金だけが残される。

 

   当然のことながら、DVDを購入し自己使用しても儲かるわけは

  ない。そうすると借金の返済に窮するわけである。

 

5 そこで、勧誘者は、A君に、他人を紹介したらマージンが得られ

  ることを説明し、DVDを購入した彼に友人等を勧誘するよう指示

  する。

 

   A君は、マージンを得て借金の返済に充てようと、友人にDVD

  の購入をさせるとともに、同様の説明を繰り返すことになる・・・。

 

 

・・・ここで注意すべきなのは、当初A君は単に投資用DVDの購入を

  勧められているだけである。

 

  もちろん、勧誘目的で喫茶店に呼び出されているのだから、

  これは訪問販売に当たるのだが、ここでは、それだけにとどまらない。

 

  A君は、後から商品を新たな友人へ購入するよう勧誘するのみ

  ならず、いずれA君と同様にマージンの支払いをもって、新たな

  購入者を勧誘するものへの勧誘を行うことになるのであって、

  特定負担(=DVDの購入)が先行し、後に特定利益(=マージン

  の支払い)を約束されることで、連鎖販売の要件を

  後から満たすことになる。

 

 このように後から連鎖販売の要件を満たすので、

   「後出しマルチ」

 と呼ばれる。

 

 この手法は、かつて、家庭用浴槽気泡発生装置の販売を行っていた

 「原ヘルス工業」が取っていた手法であるが、学生を対象とする商法は、

 借金をさせてまで商品を購入させ、その返済にはマージンをもらう必要

 があり、そのためには更なる勧誘者とならざるを得ない方向へ誘導する

 という点でより悪質である。

 

 やっかいなのは、この手法が、単なる商品等の購入契約と、連鎖販売

 取引部分とが一件切り離されてみえることである。

 

 もちろん、前述したように、購入契約のみ取り上げても特商法の訪問販売

 規制に反している(不実告知など)わけであり、であるからこそ、現実にこれを

 行っていた業者が処分を受けているわけだが、被害者となったA君の借金は

 そのまま残る。

 

 何よりも自分が更なる勧誘者(加害者)となってしまい、自ら築いた人間

 関係を破壊することにもなってしまう。

 

 したがって、「後出しマルチ」については、特定商取引法の改正などで、

 禁止も含めたより厳しい対応が必要であると考えられるが、

 多くの場合,社会経験の乏しい大学生が被害に遭っていることに

 鑑みれば、当面は、彼らに対する情報提供や教育が徹底されるべきであろう。

 

 国民生活センターの上記サイトでも注意喚起と共に「アドバイス」が記載

 されているが、 私からも、

 まずは、

  「たとえどれだけ親しくても、借金までさせて商品を購入させようとする

 奴とは付き合うな!」

 と言うアドバイスを送ろうと思う。

 

            弁護士尾崎博彦@尾崎法律事務所

            http://ozaki-lawoffice.jp/blog/

 

 カテゴリー : 一般

いわゆる「拡声器商法」について

コメント書きました。

 

さおだけ屋はなぜ「逮捕」されたのか? 「拡声器商法」にまつわるトラブル回避法

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150610-00003227-bengocom-soci

 

ここで補足しておくと、いわゆる「拡声器商法」

すなわち、

『2本で1000 円』などの拡声器の呼掛けを聞いて呼び止め ここでの勧誘に応じて、商品を購入する。

と言った商法が、訪問販売に該当するかどうかは実は問題となる。

 

何故かというと、 特定商取引法の規制が全て妥当する「訪問販売」には、

 

「その住居において・・・申込みをし又は・・・契約を締結することを請求した者に対して行う」

ものに付いては、これを除外しているところ、

 

少なくとも「拡声器商法」では、戸外の呼びかけを聞いた人が呼び止めて 自宅へ招き寄せているわけであって、 上記の除外事由に当たるのではないか?

 

と考えられるからである。

 

しかし、

訪問販売が規制されるのは、その不意打ち性にあるのであって、

たとえば、

 

「『2本で1000 円』などの拡声器の呼掛けを聞いて呼び止め、その場で呼び掛けていた物以外の(高額な)商品を購入させられた 」

 

と言うような、コラムでも照会したようなケースの場合は、まさに予想外のセールスを自宅においてされたわけであって、やはり訪問販売の除外に当たると見るべきではないだろう。

 

こういうケースは、一種の訪問予告と見るべきだとの見解もある(詳解特定商取引法の理論と実務第3版P100)。

確かに、このように考えると、拡声器商法が一般的に除外事由には該当しないと言えるので、余分のトラブル回避には役立とう。

 

 

いずれにせよ、高齢者の訪問販売に関するトラブルは著しいものがある。

なかには販売業者の氏名や住所も分からず、被害の回復がきわめて困難な事例もあると聞く。

 

このようなケースが多々あることに鑑みると、もはや訪問販売は、不招請勧誘取引の最たるものであって、確実な購買意思に基づく来訪要請による場合を除いて、全面的に禁止しても良いのではないか、と考えるところである。

 

    弁護士尾崎博彦@尾崎法律事務所

 

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