自転車事故について(2-2)
自転車事故の過失相殺の原則的な考え方は、以下のとおりである。
1.まず、自転車事故の特徴について
(1) 自動車事故に関しては、道交法所定の交通ルールの基とした過去の多くの裁判例から、事故態様により一定の基準(過失割合)が
出来上がっている。
しかし、自転車は道交法上軽車両として、自動車と異なるルールや特例が定められており、自動車事故の基準をそのまま援用することが
できない。
(2) 自動車は歩行者などに対して圧倒的強者だが、自転車はそれほどでもない。
(3) 「車はすぐには止まれない」との標語があるが、自転車は小回りが効き、比較的低速で走行しており、自動車とは異なる点を
考慮する必要がある。
(4)自転車運転者に対する交通法規に関する教育は、自動車運転者に対するものほど周知徹底されていない。
(5)事故の発生件数が大きく異なる(自転車事故は、自動車事故より発生件数が著しく少ないこと)。
・・・などが特色としてあげられる。
2.上記の特徴を加味した過失割合基準(原則的な考え方)
(1)歩行者と自転車の事故
① 歩道や路側帯上の事故
→道交法の規定より、基本的には歩行者側に責任なしと考えられる。
② 横断歩道上の事故
→基本的には自動車事故と同一基準が使用される。
もっとも、自動車事故では想定されない事故類型もあり、別途個別的な考慮も必要となる場合がある
③ 車道上の事故
→この場合も、基本的に自動車事故と同一基準が使用される。
④ それ以外の道路上の事故
→事故状況により個別に判断する。
(実務家の間でも見解が分かれる類型もあるようである。)
(2)自転車同士の事故
① 交差点での出会い頭衝突事故
→信号のある交差点などは自動車事故での基準を参考にするが、その他の場合には、当事者の進行する道路の幅員や優先関係、
直進か右左折かの違いなどはあまり考慮していない裁判例が多い。
② 正面衝突
→基本的な過失割合を50:50として、具体的な事情により個別に修正する裁判例が多い。
③ 同一方向進行中の事故
→追突事故では、自動車事故と同様に100:0をベースにするが、それ以外の事故態様では、事故状況により個別に判断するほかない。
以上きわめて簡略ではあるが、自転車事故の特色と過失相殺判断の基準を概説してみた。
なお、上記の分類は、
「自転車事故過失相殺の分析」(財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部過失相殺研究部会編著、ぎょうせい)」、
「交通事故の法律相談」(羽成守・溝辺克己編、ぎょうせい)
などを参考とした。