父親と血縁関係がないことが分かった場合、どうなるか?(その2)
先日、この話題でブログを書いたが、外野からは「何とか大沢から喜多川に対して責任追及させることはできないか?」というような意見を耳にすることがあった。
そこで、お節介にも(笑)、その点を以下のように考察してみたい。
すなわち、
「父子関係のない子供を育ててきた大沢は、喜多川に対して、賠償その他を請求できないか。」
という点である。
もちろん報道では、大沢がその様な意思を示したわけではないのであって、外野の人間としては、あくまで「その気になったらできるのか」を勝手に考察しているだけである(笑)。
1 まず、喜多川に対して養育費そのものを請求できるかという点から考えてみる。
この点、喜多川に育児放棄などの特殊事情がない限り、離婚時点までの養育の負担は喜多川自体は行っているだろう。
そうであれば、大沢に父子関係があろうとなかろうと、この点について喜多川は文句を言われる筋合いはない。
離婚後についても、養育費の負担などを果たしているのであれば、同様である。
従って、
離婚に際して、養育費を喜多川が負担することが取り決められていたにもかかわらず、これを履行していなかった
というような事情がない限り、大沢は喜多川に対して養育費を請求できないと考えられる。
2 それでも、「大沢は実の子供でないと知っていれば、養育しなかったのではないか。」という疑問はわいてくる。
そこで、この点を理由に大沢には何か請求できる権利はないのだろうか。
これは、大沢は本来義務のなかった養育の負担をさせられたことについて、喜多川に責任を追及するという性格のものである。
したがって、これは養育費そのものの請求ではなく、不法行為による養育費相当分の損害賠償というものというべきであろう。
このような請求は、一見可能に見えそうだが、じつはこれにも問題がある。
すなわち、おそらく喜多川はその子が大沢との間の子ではないことを明らかに認識していたとは考えがたい。
大沢にも「その覚え」はあったのだろうし、喜多川が大沢以外の男と当時交渉を持っていたとしても、大沢の子ではないと断定はできなかっただろうから、
どちらもその子が「私たち夫婦の子」だと信じようとしていたのだろう。
そうだとすれば、事情を全く知らない大沢に養育させる意思で結婚したというのも通常あり得ないだろう。
仮にうすうす気づいていた、としてもそこはあえて両者とも目をつぶっていた、と考えるのが自然ではないだろうか。
やはり
「大沢は実の子供でないと知っていれば、養育しなかった」
という理由で、本来負担しなくてよかった養育費相当分を賠償請求することには難しいと考えられる。
3 では、養育費相当額ではなく、慰謝料を請求するのはどうか。
この点だが、結婚以前に夫と異なる男性とつきあうことはなんの問題もない。仮にその際の性交渉により子供を出産することになっても同様である。
したがって、結婚前につきあっていた男性の子供を産むことが不法行為にならないことは当然である。
問題は、
他の男性の子供であることを隠して夫の子として養育させた点であるが、
この点については前述したように果たして両者に身に覚えがなかったとは通常言えないのではないか、
と考えられる以上、慰謝料も無理であろう。
仮に慰謝料が認められるとすれば、やはり喜多川が出産時点において、その子が大沢の子でないことを認識しており、
そうであるにも拘わらず、
父親が大沢であると誤解させて養育の負担を強いたような、きわめて限定された経緯の場合に限られるのではないだろうか。
そしてその様な経緯を大沢が主張立証するのはきわめて困難だと思う。
以上より、釈然としない方は多いだろうが、私は大沢が喜多川に「実の子供でない者を養育させた」ことを理由とする請求は、できないかきわめて困難であると考える。
・・・ 当然のことながら、他の意見もあるかも知れない。
また、あくまで、ここでは法律的な分析をしたまでであるので、倫理的なご批判はご容赦されたい(^^;)