任意整理の支払代行を勧めない理由
任意整理は通常、個別の債権者と支払総額とその支払い方法(通常は分割払い)を合意し、合意に従った支払いを履行していくことになります。その際、交渉を受任した弁護士や司法書士によっては、合意した各債権者への支払いを代行する手続も引き受けることがあります。
具体的には、受任弁護士らに毎月作債権者への分割金の合計と代行手数料(債権者一社当たり月額○○円という取り決めがあるようです)を送金し、弁護士らが債務者に代わって各債権者へ合意額を振り分けて支払うというものです。多くの場合、複数の事務所を全国展開している弁護士法人、司法書士法人が債務整理の依頼者に勧めているようです。債務者の方も各債権者への毎月の個別の支払いを自分に代わってしてもらえることで、多くの方が支払代行まで依頼されているようです。
しかし、このような支払代行の利用はお勧めできません。
その理由は以下のとおりです。
① 分割金の支払いに余分なコストがかかること
支払い代行においては、通常手数料を代行する弁護士らに支払う必要があります。
手数料の金額は毎月の支払い件数に応じた額(例:債権者1社当たり毎月1000円)のようですが、ご自身が自ら各債権者へ支払う場合に比べ、割高となってしまうことは明らかです。仮に債権者が10社あるとすれば、毎月の支払金額の合計プラス1万円も余分に送金しなければならないこととなってしまいます。最近は送金手数料も工夫次第で安くできますので、支払いにかかるコストの差額は大きく開いてしまいます。
② 依頼された弁護士らが業務不能となった時に、支払いがストップしてしまう危険性があること
支払い代行は、各債権者への毎月の支払いをまとめて送金することで債務者自身の各債権者への支払いの手間を省こうというものです。もちろん代行した弁護士らが毎月きちんと報告していても、債務者自身は各債権者への債権の残高や毎月の支払額の内訳を意識しなくなりがちと思われます(なかにはかかる報告を怠る代行者もいるかもしれ図、その場合は更に債務者は自信の債務の現状を把握できない状況となります。)。このような状況で、代行する弁護士らが業務不能となった場合、以降の支払いを債務者自身が行う必要が出てきますが、自身の債務状況が把握できないとそのための手間がかかってしまいます。場合によっては支払いがストップしてしまい、きちんと支払っていたつもりが支払いが滞ってしまうことがあります。実際にも、支払い代行を受任していた弁護士法人が業務停止の処分を受け、多くの債務者が自信の債務の支払いに支障をきたしたことがありました。
③ 借金の支払っている自覚を喪失してしまうこと
本来債務整理をされた方は、再び借金を負ったことを反省し二度とこのような状態に陥らないように生活再建を測っておられるはずです。そのためには現在自分が毎月どれだけの支払いをしなければならないか、後どれくらいで借金がなくなるのかを自覚する必要があると思います。ところが支払い代行を利用することで実際には代行手数料を上乗せした支払いをしなければならないにもかかわらず、そう言った意識が薄れてしまい、再び多重債務状態に陥ってしまうことが考えられます。この点は本人の心がけ次第とも思えますが、ご自身が支払いを各債権者へ実際に行うことで二度とそのような状態にならないよう心がけていただくべきだといえましょう。
以上より、分割金の支払代行の利用は、あまりおすすめできないし、当事務所でも任意整理に当たり支払代行まではお引き受けしておりません。
任意整理を依頼される場合には、この点も含めてご検討いただくようお願いする次第です。