不貞行為の相手方に対し、これを理由とする離婚に対する慰謝料は認められない
・・・という最高裁の判決が出た。
(平成29(受)1456 損害賠償請求事件 平成31年2月19日 最高裁判所第三小法廷)
わかりにくいかもしれないが、
不貞行為が、他方の配偶者に対する不法行為を構成することが争われたわけではなく、
「不貞行為があった結果、離婚に至ったこと」
が、不貞行為の相手方の不法行為に当たるかが争われたものである。
この点について、
「夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は,これにより当該夫婦の婚姻関係が
破綻して離婚するに至ったとしても,当該夫婦の他方に対し,不貞行為を理由
とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして,直ちに,当該夫婦を
離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはない」
と判示した。
その理由であるが、
要するに、不貞行為があったとしても、最終的に離婚するかどうかは夫婦の間で
決められるべき事柄であるから、という。
確かに、不貞行為がなされる背景には様々なものがあって、
離婚に至る場合であっても、これが直ちに原因とはならないからだ
ということなのだろう。
注意すべき点は2つある。
1 まず、この判決では、不貞行為が不法行為にならないと言ったわけではないし、また
離婚に当たって配偶者相手の慰謝料請求が否定されるわけではない。
この点は上記の判示からも普通に読み取れよう。
だからゆめゆめ、不貞行為が解禁されたなどと考えてはいけない。
2 次に、「特段の事情のない限り」第三者には慰謝料請求が認められないと
している点である。
判決の事案では、離婚に至る以前に、不貞行為の関係は終わっていたというもの
であって、離婚が継続している最中に離婚したものではない。
もっともこの場合は、不貞行為自体の不法行為責任を追及すれば足りるし、不貞
行為が終了していても、これを認識してから3年以内であれば、責任追及可能である。
そうすると「特段の事情」とはどういった場合を指すのだろうか。
私は、例えば、不貞行為の相手方と一緒に住むために、家を出て行って家庭を
顧みないような状態に陥り、その結果、離婚を余儀なくされたような場合を指すのでは
ないかと考えている。
さすがにそういう場合は、まさに当該第三者が不貞行為のみならず、婚姻関係を不当に
破壊したと評価できるのではないかと考えるからである。
・・・この判決が、今後の実務にどのような影響を与えるかは、離婚の相談などが
来たときに是非研究してみたいものである。