パブリシティ権について
パブリシティ権と言う権利がある。
半年前に最高裁がこの権利について初めて判断をしたというブログを書いたことがあったが、今回はもう少し総花的に少しふれてみたい。
1.まず、パブリシティ権はよく「肖像権」との関係に言及される。
肖像権というのは、「自己の容貌等について他人にみだりに撮影・公表されない権利」とされている。
この権利は、もともとプライバシー権の一つとしてとらえられてきた。
すなわち、肖像についても基本的には個人の私的領域に属する事項であって、原則としてその承諾がない限り、公表がなされるべきではないとされる。
従って、ここにいう肖像権はおよそ個人であれば一般的に認められるべきものである。
2.これに対し、パブリシティ権は通常は著名人について問題となる権利である。
芸能人など著名人については、その容姿や氏名を冠した商品が販売されており、たとえば人気のある芸能アイドルなどはその姿がプリントされたグッズを人々が買い求める。
すなわち、著名人には、その容姿や氏名が顧客吸引力を持ち独自の経済的価値を持つといえる。
かかる経済的価値をその主体である著名人が独占的に使用管理できるとする権利がパブリシティ権である。
肖像権がもっぱら人格権といった非財産的な価値を保護しようとするのに対し、パブリシティ権はもっぱら財産的価値についての権利であるといえる。
3.注意すべきは、パブリシティ権は、法律上具体的に明文化されているわけではなく、裁判上問題とされた際に確立してきた権利であるということだ。
その結果、パブリシティ権があるといっても、いくつも検討しなければならない問題点があることが徐々に分かってきた。
たとえば、
- パブリシティ権というものがどういった場合に認められるのか。
- パブリシティ権が著名人の容姿・氏名等についての経済的価値を保護しようとする者なら、物についてもパブリシティが認められるのか。(ex.競争馬の名前など)
- どういった態様の行為がパブリシティ権を侵害したといえるのか。
- パブリシティ権の侵害があるとされる場合に、どういった救済方法があるのか、商品の販売を差し止めることができるのか、損害賠償請求にとどまるのか。
- 損害賠償請求の際の損害額はどうやって算定するのか。
といった問題である。
これらの点については、裁判例で顕在化することがあるが、これを説明するための理屈付にもいくつもの見解が分かれている(パブリシティ権の性格を語句おおざっぱに分類すると、人格的価値を根拠にする以上人格権であるとする立場と、人格権から切り離された独自の財産権であるとする立場に分かれる。この点の議論は上記の問題点についての結論のそういや説明方法に影響を与える。)。
要するに、パブリシティ権は、その存在はほぼ確定的に承認されているものの、その内容や性質については必ずしも一定しておらず、議論の余地がきわめて大きいのである。
4.このようなパブリシティ権については、前述したように最近、最高裁で判決がでた(ピンクレディ事件・平成24年2月2日判決)。
最高裁・平成21(受)第2056号 ・平成24年2月2日判決
従来からパブリシティ権に関する裁判例は存在している。
その数は実は結構あったが、最高裁まで争われることがきわめて少なく、今まで最高裁が明示的にその権利を承認したものはなかったとされていた。
この判決は最高裁が初めてパブリシティ権に積極的に言及したものと位置づけられている。
しかしこの判決は、パブリシティ権がどういう場合に認められるかをいくつかの例示をしただけであって、ほとんど、今まで実務上パブリシティ権について問題とされてきた点に何の言及もしていない。
この判決によりあらためてパブリシティ権に興味が湧いてきた。
今後このブログでパブリシティ権の裁判例を要約・検討して紹介していこうと思う。
これからこのブログは他の人への情報発信よりも、自分の検討結果の備忘録的な意味合いが強くでるかもしれないが、他人にも読んでもらうことも意識しながら、継続的に紹介していきたい。