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パブリシティ権と肖像権(パブリシティ権覚書1)
今回は、パブリシティ権と肖像権の関係について書き留めておく。
なお、今後、判例の紹介以外のパブリシティ権に関するコメントは「覚え書き」としておこうと思う。
実際はこれまでの駄文も「覚え書き」なのだが(笑)、便宜上今回をその1としておく。
ピンクレディ事件の最高裁判決で明らかとなった点としては、パブリシティ権が人格権に由来すると同時に、肖像等の人格的価値が
商業的価値を有することを認め、その財産的側面を権利として承認するものである。
従って、パブリシティ権は肖像の持つ精神的価値を保護する「肖像権」とは別個の権利であり、パブリシティ権侵害により生じる損害も
専ら経済的損害に限定(経済的利益の侵害にも慰謝料が認められるとする立場に立たない限り)される。
もっとも、侵害行為がパブリシティ権を侵害している場合に肖像権侵害は常に成立しない、というわけではなく、侵害行為がパブリシティ権の
侵害であると同時に肖像権の侵害にも当たる場合はもちろんありうる。(※)
ただしその場合も、パブリシティ権の侵害による損害は経済的なもの、肖像権侵害による損害は精神的なもの(慰謝料)という形で明確に
区別されることになろう。
(※)この点、中島基至調査官は、パブリシティ権侵害と肖像権侵害は、理論的には両立するが、実際には人格の「商業的価値」と「精神的価値」の両者を侵害したとして、パブリシティ権侵害と肖像権侵害のいずれも主張しうる場合が限られると思われる、という。
「最高裁重要判例解説」Law and Technology No56・76頁