(ネズミ講?マルチ商法?)潜入記(その3終)
先日、「いい投資の話がある」という怪しげな(笑)誘いを受けたので、行ってみることにしたのだが、
これが「ネズミ講」まがいの話だった。
最初の話(M氏によると「静態収入」)自体は、ネズミ講やマルチ商法ではなかったものの、
きわめて怪しい(怪しい理由は前回の疑問点参照)ものであった。
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さて、第3回目であるが、今回が最終回である。
M氏は
「静態収入でご満足できる方はお帰り下さい。
より収益を上げたい人は、動態収入についての説明をしますのでお残り下さい。」
と思わせぶりなことを言い、説明を始めた。
M氏のいう
「動態収入」とは、すなわち以下の収入がもらえるようになるという。
① 紹介報酬:会員を紹介し、新たな会員登録をさせると紹介料をキャッシュバックするというもの。
紹介料の額は会員のランクによって変わる。
・・・このあたりは、それ自体を取り上げたら、一応問題はなかろう。
問題は、むしろ以下の報酬である。このあたりになってくると正確に理解しているか自信が
なくなる(笑)のだが、
② エージェント報酬:要するに自分の下についている会員(子会員、孫会員)が複数(3人以上)
いて、その売上げが2000万円?以上なら、売上げの10%~最大で
100%もらえる、と言うことらしい。
③ マネジメント報酬・・・自分の下に3人以上の子会員がいてその子会員のランクが一定以上なら、
自分のグループの全てから2%がもらえる、と言うものらしい。
まだほかの報酬もあるが省略する(カジノのVIPルームに連れてきたときの報酬は無視してよかろう。)。
・・・お気づきかと思うが、この構造は「ネズミ講」と同じである。
すなわち、ネズミ講=「無限連鎖講」は、
「金品(財産権を表彰する証券又は証書を含む。以下この条において同じ。)を出えんする
加入者が無限に増加するものであるとして、先に加入した者が先順位者、以下これに連鎖し
て段階的に二以上の倍率をもつて増加する後続の加入者がそれぞれの段階に応じた後順位
者となり、順次先順位者が後順位者の出えんする金品から自己の出えんした金品の価額又
は数量を上回る価額又は数量の金品を受領することを内容とする金品の配当組織をいう。」
とされている。
まず、本件の会員について、報酬の条件として、子会員が3人以上存在することを前提としていること
からすれば、
「先に加入した者が先順位者、以下これに連鎖して段階的に二以上の倍率をもつて増加する後続の
加入者がそれぞれの段階に応じた後順位者となる」
と言う要件を満たすことは明らかであろう。
次に、先順位の会員の報酬の引き当ては、
「順次先順位者が後順位者の出えんする金品から」
であることも否定できないと思われる。
さらに、ここでの報酬は、
「自己の出えんした金品の価額又は数量を上回る価額又は数量の金品を受領する」
ものであるが、②や③の内容からすれば、これに該当することになろう。
・・・以上からすれば、M氏のすすめる「動態収入」は、無限連鎖講の要件を満たしそうである。
もっとも、M氏によると、この会員は、金銭の「出資」ではなく、会員権の購入であるということ
らしく、またその報酬は、円ではなく、仮想通貨(「DT」というらしい)で評価されるものだ
そうである。
したがって、本件の会員は「無限連鎖講」ではないということらしい
(もっとも、そのような言い訳以前にM氏は、同行した知人が「これってネズミ講では?」といった
際に「このシステムはみんなが儲かるから大丈夫」という、よく分からない言い訳をしていた(笑)。)。
しかし、ここでいう「会員権」が金銭の出捐の手段以外の、ほとんど実体を伴わないもの(報酬が
もらえるための方便でしかない)であるし、仮想通貨での報酬としても、これが換金可能であること
が当然の前提でなければ、このような仮想通貨に価値を見いだすことはあり得ない。
そうだとすれば、やはりM氏のすすめる「会員」は(M氏の言い訳(笑)はともかく)
「無限連鎖講」である
と解さざるを得ない。
あと会員になったときのメリットとして、M氏は、
「たまったDTでいくつかのサービスが受けられます。例えば、韓国の整形外科で
このポイントが使えます。」
だと・・・韓国まで行って美容整形を受けたい人には魅力的かも知れない(爆笑)。
・・・冗談はさておいて、ネズミ講=無限連鎖講は、れっきとした犯罪である。
「無限連鎖講の防止に関する法律」
で刑事罰を持って禁止されているのだから。
すなわち、
主催者(開設者)は3年以下の懲役と300万円以下の罰金である
(懲役と罰金が併科されることもある)。
業として会員になったものも、1年以下の懲役また30万円以下の罰金、さらに勧誘したものも
20万円以下の罰金となる。
百歩譲って、ネズミ講=無限連鎖講でなかったとしても、M氏は販売マージンからの収益を得られる
ものとして「会員」を募集して権利を販売しているわけであるから、
いわゆるマルチ商法=連鎖販売取引に当たるといわざるを得ない。
そうだとすれば、当然、特定商取引法の規制にかかるのであるが、どうもM氏はそのことすら念頭に
置いているふしはなかった。
何よりも怪しいのが、「DT」とかいう仮想通貨である。
仮想通貨といえばビットコインが有名だが、あれが一瞬で無価値となったことを思えば、この会員の
主催者本部が設定した仮想コインなどでの積立にどれほどの意味があるのだろうか。
結局、これらを総合すると、「いい投資の話」というのは、
たくさんの人を集めて、金をふんだくろうという詐欺である、
と私は結論づけざるを得なかった。
北浜の高級マンションにM氏の話を聞くために集まった諸兄姉、悪いことはいわないから、
この話に乗るのは止めなさい。お金も友達もなくすから。
(誘ってくれた彼女、おそらく泣きを見るだろうなあ・・・。)
弁護士尾崎博彦@尾崎法律事務所