「老人ホーム入居権」の買え買え詐欺だと?!
久しぶりに国民生活センターのホームページを見てみると、こんな注意喚起を見つけた。
“人助け”だと思って代わりに申し込んで!?親切心につけこむ「老人ホーム入居権」の買え買え詐欺にご注意!
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20140206_2.html
これによると、ある業者(A)から
「入居したい人が多いが権利を購入できず困っている」
「パンフレットが届いた人しか入居できない」
「お金は払うので、人助けだと思って代わりに申し込みだけしてほしい」
などと言って、あたかも人助けになるかのように思わせて、消費者(多くの場合高齢者である)に、別の業者(B)の運営する老人ホーム入居権を購入させようとする手口だそうである。
消費者は「人の役に立つのなら」というような親切心から、購入する気のない「老人ホーム入居権」の購入申込をするわけであり、もちろん、このような申込は真意でなされたわけではないのだが、問題は名義貸しを依頼してきた業者Aと、申込先の業者Bが別主体とされている点である。
このような申込は、実は真意でないとしても原則として有効とされる(民法93条本文)。
したがって、申込を受けた業者Bは、申込をした老人に対して、契約が有効になされたとして支払いを要求してくるわけである。
しかしながら、実際には業者AとBはつるんでいるのであって、このような申込が実は真意でないことをBに対しても主張できないことはおかしい。
このような手口で無理矢理「老人ホーム入居権」を購入させようとすること自体、詐欺である(だからこそ、こういった手口を「買え買え詐欺」というのであ る)し、業者Bからの請求に対しては、申込の無効(民法93条但書きかあるいは民法95条(錯誤無効)を根拠とする)あるいは取消(民法96条(詐欺によ る意思表示の取消)を主張することになろう。
国民生活センターのアドバイスでは、
1 「代わりに申し込んで」「名義を貸して」「あなたの名前で買った」などと持ちかけてくる不審な電話は、相手にせずすぐに電話を切れ。
2 業者とやりとりしてしまっても、話をうのみにせず、絶対にお金を払うな。
3 すぐに消費生活センター等に相談してほしい。
ということを書いている。
ただ、このアドバイスは事前の対処として正しいとしても、支払いを拒絶する法的根拠を整理するならば、上記のようになるわけであり、
「業者から頼まれて名義貸しをさせられたのであり、このような勧誘をオタクが知らないはずはない!だから、この申込は無効(もしくは取り消す)だ!」
といって、対抗することになるだろう。