父子関係についての最近の裁判例
・・・最近、父子関係についての注目すべき裁判例がいくつか出ているようである。
まずは、血縁関係のない子を認知した父親が、その認知の無効を請求したことを認めた最高裁の判決が出たようである。
最高裁:血縁ない子を認知…無効請求認める
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/nation/20140114k0000e040148000c.html
認知というのは、法律上の婚姻関係にない男女のあいだに生まれた子供について、その父または母がその血縁関係の存在を認める行為である。
したがって、認知をした父と子のあいだに実際には血縁関係がないときは、認知は無効と考えられ、利害関係人は認知の無効・取消しの裁判(人事訴訟法2条)をすることができる。
ところが、一方で民法は、
「認知をした父または母は、その認知を取り消すことができない。(785条)」
と規定している。
そこで、認知した子とのあいだに血縁関係がないことが判明した場合、認知した父自身が無効を主張できるか、が問題となったわけである。
この点について、最高裁は、認知者側の請求を認める判決を言い渡した。
このことは、実際の血縁関係を重視するという方向性を示したものと言える。
次に、
DNA型鑑定で血縁関係がないと証明されれば、父子関係を取り消せる、
とした裁判例が出たそうである。
父子関係、DNA鑑定で取り消し 司法、異例の判断
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/nation/ASG1G6WKRG1GUTIL05R.html
民法は婚姻関係のある男女のあいだに生まれた子供を嫡出子として、女性が婚姻後、一定期間後(あるいは離婚後一定期間内)に産んだ子供をその夫婦の間の子供(嫡出子)と推定する旨の規定をおいている。
従来、その推定はきわめて強固なもので、原則として、父子関係を否定するにはこの出生を知ったときから1年以内に夫から嫡出否認の訴えを起こさなければならないとされてきた。
一方、嫡出子として扱われる子供であっても、
「客観的にその夫婦の間(特に父)の子供ではないことが明らかな事情
(例えば父親が遠方に赴任しており、妻の妊娠時期には、妻との接触が
全くありえなかったような場合)がある場合には、その推定は及ばない」
ものとされ、嫡出否認の訴え以外でも父子関係を否定することを例外的に認めてきた。
しかし
従来、推定が及ばない場合はきわめて限定的に解されてきており、DNA鑑定など科学的な確認手段に基づいて父子関係の存否が判断された場合も、法律上の父子関係を否定する取扱をすることは、裁判所は消極的であった。
それがどうも記事によると、
DNA鑑定によって生物学上の父子関係が否定された場合に、法律上も
それを否定する
取扱い、としたわけである。
以上、最近の裁判例を紹介したが、これらに共通しているのは、
現代においては、科学的な観点から、より真実を求めることが容易に
なったわけであり、このことが家族の在り方を規定する法律にも影響を
与えざるを得ない
ということである。
しかしながら、「家族」が血縁関係を前提とするものだとしても、
「父親が誰か?」
といったことは、子供にとって本当は知らなければならないことか、という疑念は残る。
果たして、科学の進歩と法律の関わり合いが、「幸せな家族の在り方」に真に貢献しうるものかどうかは、今後見守る必要があると思われる。