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令和4年司法試験・刑事系(刑法)解答例

問題文はこちら↓↓
https://www.moj.go.jp/content/001371991.pdf

 

【解答例】
第1 設問1について
1 (1)の主張について
(1)甲に横領罪が成立するには、「自己の占有する他人の物」を「横領した」

   といえなければならない。
    この点、甲は本件バイクを保管しており、他人の物を占有しているといえる。

   問題は、委託信任関係に基づく占有といえるかである。甲はAが盗んできた

   バイクをAからの依頼で保管していることから、正当な権利者からの委託信

   任関係はないからである。思うに、横領罪の保護法益は所有権その他の本

   件であるが、これを保護するに当たっては、なんらかの委託信任関係に違背

   したものを対象とすべきであると考えられる。このように考えることが、窃盗罪

   等ほかの領得罪において一応の占有を保護する趣旨と同様に位置づける

   ことができるからである。
(2)そうだとすれば、窃盗犯から盗品の保管を委託された場合であっても、そ

   の物を「横領」した場合には横領罪が成立すると解すべきであり、(1)の主張

   はこの見地から妥当である。
2 (2)の主張について
(1)甲の(2)記載の行為が「横領した」といえるかは、まず「横領」とは何かが

   問題となる。
    この点、横領罪も権利者を排除して目的物を自らのほしいままにするという

   性格上、他の領得罪と同様に、不法領得の意思が必要である。ただ、横領

   罪の場合は占有を侵害するものではないことから,その意思は「委託の趣旨

   に反して、その物の効用に基づいて所有者でなければできないような処分をす

   る意思」であると思料する。
(2)問題は、Aに無断で甲の実家の物置内に本件バイクを隠した行為に横領

   罪における不法領得の意思が認められるかである。
    思うに、甲は本件バイクについて単に隠匿しただけであって、Aの委託の趣旨

   に必ずしも反したとは言いがたい。また本件バイクを利用・処分する意思もなく、

   物の効用に従った利用をする意思も認められない。よって、甲には本件バイク

   に対する不法領得の意思は認められず、横領罪は成立しないと解されるので

   あって、(2)の主張は妥当でない。

第2 設問2について
1 乙がAを本件ナイフで刺した行為に傷害罪(204条)が成立するか。
(1)乙は、甲を助けようとしてAをナイフで刺したのであり、乙に正当防衛が成立

   するかがまず問題となる。
2 正当防衛が成立するには「急迫不正の侵害」の存在が要件となるが、本問に

  おいてAから甲に対する「急迫不正の侵害」があったといえるか。
(1)およそ甲はAとの盗難バイクを巡っての諍いから、Aとケンカ状態になること

   を予想し、現実にもAからの殴打行為に対して甲も包丁を持ち出すなどの

   ケンカ状態に陥っていたものである。この場合、Aの甲に向けての殴打行為が

   甲にとって一方的に差し迫った侵害とはいえない。そうだとすれば、Aの行為

   が甲に対する「急迫不正」の侵害とはいえないと解される。
(2)よって、甲に対するAの殴打行為から乙が甲を助けようとして、ナイフで

   刺した行為は急迫不正の侵害に対するものとはいえず、正当防衛は成立

   しない。
(3)もっとも、乙が行為に及んだのは、Aが甲を殴打しようとしているのを目撃

   し、「Aが甲に対して一方的に攻撃を加えようとしていると思い込んで」おり、

   甲のために防衛行為に及んだのであるから、急迫不正の侵害があったと誤

   信している。一方、かかる行為はAが素手で殴ろうとしているのに対して、

   警告もせずいきなりナイフをAの右上腕部に突き刺していることは、防衛行為

   として過剰と言わざるを得ない。以上からすれば、乙の行為はいわゆる「誤想

   過剰防衛」であるといえる。
(4)誤想過剰防衛については、乙には上記の思い込みにより、急迫不正の

   侵害についての誤信がある以上、この点に故意を認めることはできないと解

   される。しかし素手のAに対して警告もせずに危険なナイフで刺すという行為

   に出ている点からは過剰性についての認識が否定できない。そして正当防衛

   状況にあっても相当性を欠くときは過剰防衛として正当化されないことから

   しても故意を阻却することはできないと解する。よって乙には傷害罪が成立する。
(5)なお、乙に36条2項の類推適用により、刑の減免の余地があるか。
   思うに、36条2項で過剰防衛に刑の減免を認めたのは,急迫不正の侵害

   に対しては往々にして過剰な行為に出てしまう場合があるということから行為

   者の責任が減少すると考えられることによる。
     しかし、誤想過剰防衛においては、そもそもが防衛行為が正当化される

   余地はない。このことからすれば、類型的に責任を減少させるとは言いがたく、

   同条の類推適用は認められないと解すべきである。
3 乙が本件原付をDに無断で発進させた行為に窃盗罪(235条)が成立しないか。
(1)まず、乙は本件原付を他人の物であることを認識しながらその承諾を得

   ることなく、自己の占有下においたものである。所有者であるDはエンジンを

   かけたまま一時的に止めていたのであるから、なおDの占有下にあるといえ,

   乙はこれを侵害したといえる。
(2)また、乙は一時的であっても所有者Dの占有を排除して発進させたので

   あり、しかも安全な場所へ移動したら放置しようとしたのであって、権利者を

   排除して物の経済的用法に従った利用・処分をする意思はあったといえる。

   よって乙の本件原付への占有侵害は窃盗罪の構成要件に該当する。
(3)もっとも、乙はAの追跡を振り切るために,本件原付を発信させたこと

   が緊急避難(37条)に当たらないかが問題となる。
    確かに、Aが乙を追いかけてくる状況に陥っていることからすれば、乙が

   Dの原付を運転したのは、現在の危難を避けるためにやむを得ずにした

   行為であるかに見える。しかし、Aが乙を追いかけてくる状況を作出した

   のは、自らのAに対する傷害行為に基づくものであって、かかる傷害行

   為が正当化されないものである以上、やむを得ない行為といえるかは極

   めて厳格に検討すべきであると解される。これを前提にすると、乙はナイフ

   を取り落としており互いに素手になっていること、刺されたにもかかわらず,

   乙を痛めつけようとして追ってくるような気性のAから追いかけられたこと、

   一方乙はAから蹴りつけられ、更に殴る蹴るの暴力を振るわれると思った

   こと、乙がAの追跡を振り切るために唯一の手段とされる原付の発進を

   行ったこと,等に鑑みると「やむを得ない」かどうかを厳格に判断したと

   しても、乙が現在の危難を避けるためにやむを得ずにしたとみて良いと

   考えられる。更に、身体の危険性とDの財産権とを比較しても、後者

   が前者に比して侵害が大きいとまではいえない。
     以上より、乙には緊急避難が成立し、この点について窃盗罪は

   成立しないと解する。
(4)なお、乙の当該行為に正当防衛は成立しない。Aの追跡行為が乙

   の傷害に起因する以上、急迫不正の侵害とは言いがたいし、無関係

   のDの権利の侵害が正対不正に対する防衛行為を容認する正当防衛

   とはいえないからである。
                                        以上

 カテゴリー : 一般, 法律

令和5年司法試験・刑事系(刑法)論文問題解答例

思うところがあって、近年の司法試験の問題について解答例を作成してみることとした。
先ずは、令和五年度刑法の論文問題について解答例をあげてみる。
 問題文はこちら
  ↓ ↓
https://www.moj.go.jp/content/001400046.pdf

令和5年度 司法試験 刑事系科目(第1問 刑法)

【解答例】
第1 設問1について
1 (1)について
(1)詐欺罪の未遂が成立するには,詐欺罪の実行の着手が認められなければならない。
(2)およそ実行の着手が認められるには、実行行為に密接した行為が開始される、あるい

   は法益侵害の現実的危険性がある行為がなされたといえなければならない。
(3)詐欺罪は、欺罔行為により、錯誤に陥ったものが財物を交付することで成立するが、

   財物の交付を要求する段階に至らなくても、実行の着手を認めてよい場合がある。なぜ

   なら欺罔行為がなされた段階で財物の交付に対して密接性を有し、あるいはその段階

   で財物に対する現実的危険性がすでに顕在化したと評価できる場合があるからである。

   このように考えると、欺罔行為により財物交付の危険性が現実化していれば、交付を要

   求しなくても詐欺罪の実行の着手があったと評価してよい。判例も、欺罔行為により錯誤

   に陥った被害者が財物の交付が可能な状態に至った段階で、財物の交付を要求するに

   至らなくても詐欺罪の未遂を認めている。
2 (2)について
(1)上記の視点からすれば、詐欺罪の場合、欺罔行為が財物交付に向けての現実的

   危険性があるかどうかから判断することになる。
(2)そこで以下のように検討する。
   ア まず①では被害者に何らの働きかけもしていない
   イ ②の段階でも電話1での欺罔行為は財物の交付の準備に向けられていないだけで

    なく被害者への働きかけによっても共謀内容・犯罪計画が明らかとはなっていない。

    よって、②でも実行の着手を認めることはできないと解する。
   ウ 一方、③の電話2をかけた段階では、まだ現金の準備はされていないものの、それに

    向けられた欺罔行為は明らかにAへの働きかけという意味での意図が表現されている

    点で②と異なる。そして、現実に錯誤に陥ったAが現金の準備をしているのであって、

    受け子がA宅を訪問すればAが現金交付した蓋然性は高い。この状態を誘発したの

    は③の欺罔行為であって、特に支障のない限りAが財物交付にいたることの蓋然性が

    この段階において生じているといえる。そうだとすれば、Aに現金引き出しを指示する架

    電行為③に詐欺罪の現実的危険性が認められると言うべきである。
      よって、③の段階で甲らに実行の着手を認めるのが妥当であると解する。
第2 設問2について
1 まず乙と丙には、共同してBを縛り上げて金を奪ったのであるから、強盗罪(236条1

  項)の共同正犯が成立する。
2 次に、乙と丙の強盗行為が終了してから、Aは転倒して傷害を負ったものであるが、かか

  る傷害結果についても乙と丙に責任が及ぶか。
(1)この点、強盗傷害罪が成立するには、強盗行為(強盗の手段たる暴行脅迫はもち

   ろん、強盗の機会になされた行為も意味する)と傷害との間に因果関係が存在すること

   が必要である。
(2)刑法上の因果関係の存否は、当該行為から結果が生じたことが,一般社会上の

   経験に照らして相当といえる必要があるところ(相当因果関係説)、特に行為後の

   事情については、行為時において一般人の見地から予見可能でなければならないと

   考える。
(3)Bの傷害は乙丙の強盗行為が終了して2時間程度経ているが、高齢の男性であ

   るBが強盗行為終了後も手足を縛られて不自由な状態におかれていたのであり、B

   が転倒した原因は手足を縛られたことからすれば、乙丙の行為が原因となってなんらか

   の傷害を負うことは十分に予見可能であったものであるといえる。

    よって乙丙の強盗行為とBの傷害との間の因果関係は認められる。
(4)また、乙丙にBに対する傷害の故意はないものの縛り上げて放置することからBに

   傷害が生じ得ることは予見可能だったといえ、結果に対する過失も認められる。
(5)以上より、強盗致傷罪の致傷結果に過失を要求しない立場はもちろん過失を要

   するとしても、乙丙に強盗致傷罪(240条前段)の責を免れない。
3 甲の罪責
(1)甲は、乙丙らとBから現金をだまし取ることを共謀したが、乙丙は強盗(致傷)に

   及んだものであり、甲に強盗の故意は存在しないから(38条1項)、強盗罪(致

   傷も含む)は成立しない。
(2)もっとも、甲が乙丙らと共謀したことがきっかけとなり、乙丙が強盗に及んだことから、

   甲には詐欺罪の限度で罪責を負わないか。
  ア 共謀内容と実際に行われた犯罪との間に齟齬がある場合、果たして当該犯罪が

   共謀に基づいてなされたといえるか,すなわち共謀の射程が問題となる。
    思うに、当該犯罪が当初の共謀の射程内にあるといえるには、共謀により当該犯罪が

   実現されたといえなければならないと考える。そしてその判断基準としては、共謀と犯罪

   行為との時間的場所的間隔の近接性、共謀者の関与の程度、共謀内容から想定

   される犯罪内容との相違の大小、罪名の齟齬の多少などから総合的に判断すべきで

   あると解する。
  イ 本問の甲においては、共謀がきっかけとなって乙丙の強盗行為を招来したといえなくは

   ないが、そもそも甲はあくまでも詐欺を前提に乙丙にその指示を出していること、甲の欺

   罔行為によりBが錯誤に陥っており、甲の指示どおりに乙丙が行動すれば,その実現は

   容易であったと考えられること、さらに詐欺と強盗では罪質が異なること、からすれば、

   およそ乙丙の強盗が甲の共謀の射程であったと考えることはできないと思料する。
  ウ よって、甲には強盗罪はもとより乙丙の行為を原因としては詐欺罪の限度でも罪責

   を負うことはない。
(3)ただし、甲は自らBに対する欺罔行為を行っており、前述のように2回目の電話

   をかけた時点で詐欺罪の実行に着手したと考えられるから、結果に対する罪責を負

   わないとしても詐欺未遂罪が成立する。
     以上より、甲には詐欺未遂罪が成立する。
第3 設問3について
1 前記6で丁に業務妨害罪が成立しないとする見解について
(1)まず、丁に業務妨害罪が成立しないとする結論を導くには、およそ「公務」は

   「業務」に該当しないとする(ア説とする)か、あるいは権力的公務は「業務」に当

   たらないとする見解(イ説とする)が考えられる。
(2)すなわち、ア説では丁の行為が公務を妨害していることは明らかであるが業務性が

   否定される以上、公務執行妨害罪に該当しない程度の威力によるものに業務妨

   害罪は成立しない。後者の見解でも逮捕行為が権力的公務であることは当然で

   あるから同様である。
2 一方、前記7で丁の業務妨害罪を肯定するには、上記の見解との関係でどのように

  説明すべきか。
(1)まず、前記7における警察官5名の職務は「乙の追跡・逮捕」であり、これは権力

   的「公務」といえる。
(2)この点、ア説からは、本件職務は「公務」であって「業務」には当たらないので業務

   妨害罪は成立しない。そしてこの帰結はこの説では修正できない。
    思うに、公務にも多種多様なものがあり、これを一律に業務に当たらないとすること

   自体妥当ではない。やはり、業務の性格上、これを不当に妨害する行為に対しては、

   公務執行妨害罪での対応に限定せず、業務性を肯定すべきであると考える。
(3)そうすると、やはり業務に対する妨害を排除可能とするイ説を基本とすべきである。

   ただ、権力的公務について一律に業務性を否定するのであれば、前記7について,

   業務妨害罪の成立を認めることはできない。
    そこで、権力的公務の範囲を限定し、警察官の応援を求める段階では、抵抗を

   排除できるだけの権力的公務に該当しないとする見解が考えられるが、この説では、

   「権力的公務かどうか」の判断が場当たり的になるように思われる。
(4)結局、権力的公務については、威力のような抵抗を排除できるもののみ業務妨

   害罪の対象外であり、権力的公務であっても排除できない偽計による業務妨害は

   否定されないとすることが考えられる。この見解からすれば、権力的公務において

   排除できるかどうかで業務妨害罪の成否を判断することになる。
3 まとめ
   以上より、丁の行為が6において業務妨害罪が否定され、7において肯定されるには、

  権力的公務に業務妨害罪は成立しないという立場を原則とした上で、権力的公務に

  も一定の場合には業務妨害罪を認めるという見解が妥当であると考える。
                                                以 上

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破産手続の期間(その1)受任から申立まで

 依頼者から「破産の手続にはどれくらいかかりますか」という質問をよく受けます。

 

 これに対しては私も明確には説明しずらかったのが本当のところです。

 

 というのは、受任してから各債権者への通知をおこない、請求をストップさせても、実際に申立に至るまででもどの程度時間がかかるかは様々だからです。

 

 また、申立を行っても、裁判所から補足・訂正の指示が来たりすることがありますが、その内容によってはなかなか対処できない場合もあります。ただ、申立から開始決定までの期間や、開始決定から免責許可決定を受けるまでの期間は、比較的一定の期間内に収まることが多いです。

 

 そこで、あくまでも、当職が手がけた限度で、ここ数年の破産事件の日数(期間)を整理してみました。その結果分かったことを紹介したいと思います。

 

1 まず、受任してから申立までの期間は以下のようになっていました。
(1)平均
   ・受任全体     約210日
   ・同時廃止の場合 約176日
   ・管財事件の場合 約290日

 

(2)最長と最短
                最長      最短
 ・同時廃止の場合   1211日  46日
 ・管財事件の場合   1478日  39日

 

2 以上のように、当職の場合、受任してから破産の申立までの平均日数は同時廃止で約半年、管財事件で約10ヶ月となっていました。

 

  もっとも受任から申立にいたるまで1年以上かかるケースもあり、同時廃止の場合、年1件程度、管財事件でも年3件程度が受任から一年以上かかっていました。

 

  この原因ですが、管財事件として申し立てる必要があるときは、破産費用の準備に時間がかかってしまい、申立に時間がかかったケースがほとんどでした。

 

  そのほかの理由としては、依頼者の方が病気などで連絡を取るのに困難となったり、資料を集めるのに苦労され、結果として時間がかかってしまうケースもあります。

 

  また、同時廃止で申し立てたところ、裁判所の指示で管財事件に移行した場合などもあります。

 

  一方で、管財事件でも予納金の準備が速やかにできるときはむしろ同時廃止よりも申立が早くなることもあります(申立移行の手続に時間がかかるケースもありますが、その理由は別のところにあります。)。

 

 以上のように、破産事件について、まずは、受任から申立までの期間について、当職の扱った事件から目安となる期間をご紹介しました。

 

 これを踏まえてみれば、受任から申立までは、(あくまでも当職が受任した場合に限定してのことですが)同時廃止で約半年、管財事件で約10ヶ月はかかると考えていただければよいでしょう。

 

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浪費等と破産手続

 前回のブログ(11月19日)では、
「浪費があっても直ちに免責不許可となるわけではない」
ことを説明しました。

 

 だからといって

「浪費があっても自己破産において不利益な取扱をされることはない」

と言うわけではありません。

 

 浪費が原因で経済的な破綻に至った場合、免責不許可事由
であることは間違いありませんので、裁判所も免責を許可するかどうかを

慎重に判断することになります。

 

 したがって、このような場合には、財産の多寡にかかわらず
破産管財人を選任することが求められる場合があるのです。

 

 破産管財人が選任されると、破産者には以下の負担が
課せられることになります。

・管財人選任のための予納金納付

 破産管財人の専任のための費用負担として
 この場合、裁判所に最低20万円程度の予納金
 納める必要があります。

 

破産手続の長期化
 また、破産管財人は、破産者の免責不許可事由を
 調査するとともに、現状の生活状況から二度と同じことを
 繰り返さないように指導することとなります。
 その結果、必然的に破産管財人が選任されない場合
 (同時廃止)に比べて、破産開始決定から免責許可を
 受けるまでの時間が長くなります。

 

報告義務や郵便物の転送など
 破産手続が継続している期間中は、破産者は管財人や
 裁判所に対する報告義務を課せられ、また郵便物は
 いったん破産管財人の手元に届くことになり、直接
 郵便物を受け取るのに時間がかかるといった負担が
 あります。

 

 

もちろん、免責不許可事由がなくても一定の財産を
有している場合には破産管財人の選任は不可欠ですが
そう言った財産を有していなくても、浪費等の場合は
管財人を選任することが要求されることがあります。

 

なお、同じ浪費でもギャンブル等による場合の費消より
FX取引や株式投資など「投資」の失敗によるケースの
方が、管財人選任の可能性が高いというのが,
当職の感触です。
(「投資」名目の場合、その内容が把握しにくいことや
財産隠しの可能性があるからだと考えられます。)

 

 

いずれにしても
ギャンブル等による浪費の場合、管財人が選任される
ケースがありますが,誠実に対応することが
必要です。
具体的なケースについては申立に当たって
ご相談いただければと存じます。

 

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浪費と免責不許可について

 破産法は、免責不許可事由に該当しない場合に免責許可の

決定をすると規定しております(法252条1項)。

 

 免責不許可事由には、
 ①債権者を害する目的での財産減少行為
 ②浪費、射幸行為
 ③詐術による信用取引
 ④説明・調査義務違反(裁判所への虚偽説明も含む)
などがあげられます。

 このうち、個人の破産者の場合、②に該当する行為を行っていた人が少なくありません。

 

 もっともこういった免責不許可事由があるからと言って、

直ちに免責不許可となるわけではありません。

 

 破産法では、

「(免責不許可事由に該当する場合であっても)裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。」(法252条2項)

と規定しており、多くの場合裁量による免責が許可されています。

 

 実際、大阪地裁への破産申立の件数は年間約6000件程度であるのに対し、そのほとんどは免責が許可されているのが実情です(下記のように免責不許可となった件数は年間10件以下のようです。)。

 

 大阪地方裁判所では、最近における免責不許可事由の事例を紹介しております(月刊大阪弁護士会連載「はい6民です。お答えします」)。

 

 これによると免責不許可となった事例は,ここ2年(2022年9月号、2023年9月号)で18件が紹介されておりますが、そのうち13件が前述②を理由の一つとしています。

 ただ、②のみを理由として免責不許可となった事例は、18件のうち2件だけのようです。その2件も浪費の程度が数千万円に及ぶような極めて多額の浪費が問題にされている事例です。

 

 免責不許可となっている事例は、浪費等の存在以外に、説明義務や裁判所への協力、あるいは債権者集会への不参加など破産者としてすべき説明や協力義務に違反したことや、使途不明の財産隠し等の不誠実な行為がなされたことが併せて問題とされています。

 

 逆に言うと、過去の浪費・ギャンブル等の事実があったとしても、これを真摯に反省し、破産手続において誠実に対応することで裁判所からの裁量免責を得ることができると考えられます。

 

 したがいまして、免責不許可事由に該当する行為があったとしても、今後の対応次第で免責許可が得られる場合がありますので、決して諦めたり自暴自棄になったりせず、ご相談ください。

 

 そのためには、過去の浪費等を正直にお話いただくことが必要です。もちろんそこから今後の経済的再生に向けての反省点なども当職もともに考えて協力させていただきたいと考えております。

 

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アフターコロナにおける債務整理について

 コロナ禍で売上げが減少し、多くの企業や個人が債務超過の状態から
抜け出せないと思われますが、実際のところはどうなのでしょうか。

司法統計を見ますと以下のように最近の倒産の申立件数は
減少傾向にあったようです。

    破産   小規模個人再生  給与所得再生
R3年  73,457    10,509      740
R4年  70,602     8,982       782

(新受件数・令和4年司法統計年報速報版による。)
https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/644/012644.pdf

 

ここから見ると、令和4年度は3年度より倒産の数が
減っているように見えます。

 

しかし、これらはコロナ禍での補助金・貸付金の支給や
支払猶予などの措置により、法的な債務整理手段をとること
を控えたからではないかと考えられます。

 

したがって、これらの措置が解除されるに伴い
実際には既に倒産状態であった企業や個人が法的整理を
余儀なくされることが考えられ、破産申立等が増加する
と考えられているようです。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000600.000043465.html

 

上記サイトの記事では専ら企業の倒産に言及しているようですが
当然これらは個人にも波及すると思われます。

 

現実に当事務所にご相談に来られる方も
「コロナ禍で売上げが激減して支払が困難になった」
とか、
「派遣の給料が下がってしまい、それを補うために借入をしたが
返済が困難となった」
と言った事例が多く見られます。

 

アフターコロナにおいて、先ずは生活を立て直すために
収益や賃金確保も必要ですが、従前の債務をどのように
整理すべきかも検討する必要があります。

 

当事務所においても

そのお手伝いができるようにしたいと思いますので、遠慮なくお問い合わせ・ご相談ください。

 

 カテゴリー : 一般, 法律

令和5年GW(4月29日~5月7日)の業務について

当事務所のゴールデンウィーク(令和5年4月29日~5月7日)までの業務は以下のとおりです。
4月29日(土)、30日(日)・・・お休みとさせていただきます。
5月1日(月)、2日(火)・・・平常どおりです。
5月3日(水)~7日(日)・・・午前11時から午後6時まで
           (ただし、事前に予約いただいたときは調整いたします。)
以上よろしくお願い申し上げます。

 カテゴリー : 法律

FXと破産1(破産の原因とFX)

(※)本稿は、FXが破産の原因になることを指摘して注意喚起するためのものです。したがってFXにより

  利益を出し続けている人や儲ける自信がある人等、FXに価値を見いだしている方は、本稿を読むより

  ご自身の信じる道を行かれるのがよろしいかと存じます。

 

  最近、当事務所に自己破産を依頼される方のうち、FX取引を失敗された方が

目につくようになりました。

 

 FX(外国為替証拠金取引)は、「証拠金(保証金)を金融機関に預託し、差金

決済により外国通貨の売買を行なう取引」(ウィキペディアより)です。日本円と外国通

貨を売り買いする取引ですが、証拠金の何倍もの取引が可能であることから大きな利益

が出ることもあるが同様に損失も大きくなるハイリスクハイリターンな取引です。

 

 FX取引の詳細な説明はここでの主題ではありませんが、当然のことながら、FXは

これをすることで資産を増やそうとしたにもかかわらず損をして、これが原因で破産する

人が現実におられることからすれば、一定の人たちにとっては問題のある取引です。

特に「為替レートの変動」という未確定な事項により損益が生じるものである以上、

どんなに予見しても限界があります。少なくとも専門的な投資家以外の人にとっては

「ギャンブルと同じ」といわざるを得ません。

 

 したがって、FX取引が原因で破産する人は必ず存在しますし、儲かった人たち

がそのメリットを強調しても、一定の人たちには手を出してはいけない取引なのだろう

と思われます。

 

 では、どういった人たちがFXに手を出してはいけないのでしょうか。
 この点については、FX取引を勧めるサイトにも以下のような行動がFX取引で

失敗する原因であると書かれております。

 

 ①損切りができない。
 ②高レバレッジでの取引をする。
 ③勝てる根拠のない取引を続ける。
 ④追証のために借金をする。

 

 おそらくは、①~③を続けるうちに損が大きくなってしまい、これを取り戻そうとして

追証を入金するとき、手持ち資金では追いつかず借入をして入金をするという悪循環

に陥り、破産という結果に至るのだと思われます。

 

 実際にも、当職が、FXが原因で破産することとなった方に話を伺っても、損を取り

戻そうとして借金をするようになったと聞きました。

 

 結局これらのことからすれば、上記の原因を避ければよいと言うよりも、一定の方に

とってはこれらの行為(失敗)は必然なのだろうと思います。そうすると、これらの人は

やはりFX取引をやってはいけない人なのでしょう。

 

 いずれにしても、FX取引が原因で破産せざるを得なくなった人はおられますし、

その方達がFX取引に向かないことも確かです。
 特に、証拠金の調達に借金するような人は、少なくとも当職からは破産への道を

歩んでいると評価せざるを得ません。

 

(※)「FXで破産する確率は低い」と断言しているサイトも見受けられますが、何を持ってそのようなことが

   いえるのか、極めて疑問です。

 

 カテゴリー : 一般, 法律

リモート相談(WEBによる相談及び電話相談)について (令和5年3月改訂)

昨年7月29日のブログにおいて当事務所のリモート相談体制について
告知いたしましたが、あらためてその告知をさせていただくとともに、

若干の取扱変更を致したいと存じます。

 

1 リモート相談について
  ご相談に当たって、ご来訪以外の方法による場合(電話、
 メール、ウェブ面談)は、それぞれ以下のとおりと致します。

 

2 電話相談について
(1)予約なしの電話相談について
   従前通り対応可能な範囲で受け付けておりましたが
  ご相談への応答には限界があることをご理解ください。
   特に、複雑な事案の場合は、ご来訪のお願いやメール、

  ウェブ面談への切替をお願いすることがあります。
   また、回答は原則として即答できる範囲(時間的には

  10分程度まで)とさせていただきます。

 

(2)電話相談の予約について
   あらかじめ、日時の予約をいただいたときの電話での
  ご相談については、原則30分とさせていただきます。
   ご予約の際は電話のほか、メール等でもかまいません。
  料金については、ご来訪いただく場合と同様です

 

  (借金問題:原則無料。

     離婚、男女問題:平日30分以内無料

     その他のご相談:30分5500円税込み

 

3 WEB面談による相談について
  当事務所はWEB面談による相談も受け付けております。
  WEBについては、ZOOMを利用してのご相談となります

  あらかじめ、メールによるご相談予約をお願いします。

 

4 メール相談について
(1)当事務所は、メールによる相談は、以下の条件で
   対応いたします。
  ①事案及び質問内容が簡単あるいは容易に把握可能なもの
  ②明確な回答が可能なもの

 

(2)有料での回答をご希望される場合
   メール以外の連絡手段が可能であること

 

 以上、当事務所としては皆様のお悩みについて

 より適切に対応できるよう努力を続けていきたいと

 考えております。

  以上よろしくお願い申し上げます。

 カテゴリー : 法律

自己破産・個人再生・任意整理のメリットデメリット

 個人の方の債務整理(広義)には、任意整理、自己破産、個人再生(小規模個人再生、給与所得再生)がありますが、どの手続をとるのが適当かは、具体的にご相談を受けてからでないと判断できません。
 それでも、各手続のメリットデメリットをある程度知っておけば弁護士の説明が理解しやすいかと思います。
 そこで、当職が考えるこれらの手続についてのメリット・デメリットを一覧表にしてみました。

 よろしければご参考までに。

 

各債務整理手続のメリットデメリット

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