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 カテゴリー : 法律

合体フィギュアと著作権

こんな記事が目についた。

 

“合体フィギュア”販売で49歳男を逮捕 約3,900万円荒稼ぎか

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190222-00042842-houdouk-soci

 

上記のサイトによると、

「許可なくアニメのキャラクターの頭部と、ほかの胴体を組み合わせたフィギュアを

製作して販売した疑いで、49歳の男が警察に逮捕された。」

ということだそうである。

 

ところで、著作権法には、

「許可なくアニメのキャラクターの頭部と、ほかの胴体を組み合わせたフィギュアを

製作して販売したことをを禁止する

とは書いていない。

 

おそらく、元のフィギュアは、自分が入手したものであろうが

それ自体(盗んだとか言うのでない限り)が

違法となるわけではない。

 

また、自分が入手したフィギュアをそのまま誰かに譲渡しても

これ自体が罪になるとも考えにくい。

(著作物の消尽:法26条の2第2項第1号)

 

 

そうすると、件の男性は、

自分が手に入れたフィギュアを加工して

これを販売したことが、問題となったと思われる。

 

おそらくこの場合は、著作権ではなく、

著作者人格権(同一性保持権)が問題となったものである。

 

すなわち、著作権法は、

著作権とは別に著作者人格権という権利も

保護しており、これを侵害した場合には

「五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金」

に処せられる(併科もある)。

 

著作者人格権というのは、

著作権と異なり、著作者にのみ専属する

権利であって、譲渡ができない。

 

著作者人格権には「同一性保持権」というものが

ある(法20条1項)。

 

 

具体的には、無断で原著作物やその複製物を改変することは

できないとされているわけであって、本件においても

「アニメのキャラクターの頭部と、ほかの胴体を組み合わせたフィギュアを

製作」することが原著作者の無断でなされた場合には

著作者人格権の侵害と言うことになり、上記の罰則が

適用されたと言うことである。

 

おそらく、同一性保持権の侵害は「改変」がなされた場合に

成立するのであって「譲渡するか否か」は関係ないし

営利目的だったかどうかも必要ない。

 

こういったことを解説しないと、一体何が犯罪だったのかは

わからないだろう。

 

報道においても、著作権侵害については普通の人にはわかりにくいのだから

もう少し親切に報道すべきであろう。

 

 

 

 

 カテゴリー : 一般

クレジットカード対応いたしました!

本日(平成31年2月22日)から、

クレジットカード端末を導入しましたので、

カードでの支払いをご希望の方についても対応できます。

 

ただし、当面は相談料のお支払のみとさせていただきますので

ご留意くださいませ。

 

より皆様の利用しやすい法律事務所へ努力いたしますので

今後ともよろしくお願い申し上げます。

 カテゴリー : 法律

不貞行為の相手方に対し、これを理由とする離婚に対する慰謝料は認められない

・・・という最高裁の判決が出た。

 (平成29(受)1456  損害賠償請求事件 平成31年2月19日  最高裁判所第三小法廷)

 

  わかりにくいかもしれないが、

  不貞行為が、他方の配偶者に対する不法行為を構成することが争われたわけではなく、

  「不貞行為があった結果、離婚に至ったこと」

  が、不貞行為の相手方の不法行為に当たるかが争われたものである。

 

  この点について、

  「夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は,これにより当該夫婦の婚姻関係が

 破綻して離婚するに至ったとしても,当該夫婦の他方に対し,不貞行為を理由

 とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして,直ちに,当該夫婦を

 離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはない」

 と判示した。

 

 その理由であるが、

 要するに、不貞行為があったとしても、最終的に離婚するかどうかは夫婦の間で

 決められるべき事柄であるから、という。

 

 確かに、不貞行為がなされる背景には様々なものがあって、

 離婚に至る場合であっても、これが直ちに原因とはならないからだ

 ということなのだろう。

 

 注意すべき点は2つある。

 

1 まず、この判決では、不貞行為が不法行為にならないと言ったわけではないし、また

  離婚に当たって配偶者相手の慰謝料請求が否定されるわけではない。

  この点は上記の判示からも普通に読み取れよう。

  だからゆめゆめ、不貞行為が解禁されたなどと考えてはいけない。

 

2 次に、「特段の事情のない限り」第三者には慰謝料請求が認められないと

 している点である。

  判決の事案では、離婚に至る以前に、不貞行為の関係は終わっていたというもの

 であって、離婚が継続している最中に離婚したものではない。

  もっともこの場合は、不貞行為自体の不法行為責任を追及すれば足りるし、不貞

 行為が終了していても、これを認識してから3年以内であれば、責任追及可能である。

  そうすると「特段の事情」とはどういった場合を指すのだろうか。

  私は、例えば、不貞行為の相手方と一緒に住むために、家を出て行って家庭を

 顧みないような状態に陥り、その結果、離婚を余儀なくされたような場合を指すのでは

 ないかと考えている。

  さすがにそういう場合は、まさに当該第三者が不貞行為のみならず、婚姻関係を不当に

 破壊したと評価できるのではないかと考えるからである。

 

・・・この判決が、今後の実務にどのような影響を与えるかは、離婚の相談などが

  来たときに是非研究してみたいものである。

 

 

 

 

 

 

 カテゴリー : 一般

「平成が終わる記念」商法、だと?

 こういう罰当たりな商法がのさばってきつつあるそうである。

 

「平成が終わる記念」商法に注意 高額で皇室写真集売る

 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190207-00000074-asahi-soci

 

天皇陛下が、悪質商法をお許しになろうはずがないではないか!

徹底的に封じ込めてほしいものである。

消費生活センターには啓発に努めてもらいたい。

 

 

 カテゴリー : 一般

アメブロも見てね。

事務所のブログでは、あまり書かないような砕けた内容は

こちらで書いてみようと思います。

 

興味のある方は是非!

https://www.ameba.jp/home

 カテゴリー : 一般

小説『著作権は誰のもの?」(その3)

(その2より続き)

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 少し、大崎が考えを巡らせはじめ、また山川からも質問がないことから一瞬の間が開いた。

 

 その様子を心配そうに、鈴木はうかがう様子で、
「あのーそうすると、うちの頼んだのは河合さんところで山川さんが撮影したものですから、

相手のいう写真を使っていないわけですから、著作権侵害なんてあるのですか。」
と大崎に質問した。

 

大崎は
「そうですね。この場合、写真の著作者は基本的には撮影者に帰属しますから、

写真自体がどんなに似通っていても違う人が撮影したものであればそれぞれ独立した著作物であって

一方が他方の写真を侵害したということはあり得ないといえます。
 まずは、パクパクペッパーのサイトの写真が、山川さんの保有しているデータを加工したものであって、

相手の写真を流用したものではないことを説明する必要がありますね。

 

 ・・・うーん、この写真と相手のパンフレットの写真を見比べてみたら、ややアングルが違いますね。

後ろに映っているコンロの配置もやや違うようです。この点からも、写真が違うということを

アピールできるのではありませんか。」

 

鈴木はやや弾んだ声で
「ああ、本当だ。よく見ると写真自体が違うものだ!

じゃあ違う写真である以上、うちが著作権を侵害したことにはならないのですね。」

 

といったが、横にいた山川はなおも心配そうに、

 

「でも先生、ギュウジュウハウスが『うちはお宅には撮影許可は出していない。』

と言い出しても大丈夫ですか?

うちの河合がどんな許可を得ていたかなんだか心配で・・・。」

 

と食い下がってきた。それを聞いて鈴木はまたシュンとなった。

 

大崎は、
「撮影許可を得ていたかどうかと、その写真が誰かの著作権を侵害したのかは別の問題です。

この場合、写真を撮影したのは山川さんですから,通常は山川さん,あるいはその上司の河合さんか、

すでにサイトで使用しているので鈴木さんに著作権が認められます。

この写真が、パンフレットの写真の著作権を侵害しているかどうかが問題となっているのですが、

撮影許可を受けていたかどうかがこの問題に関係するとは考えられません。」
と答えた。

 

続いて、

「そもそも、ある写真の著作権を侵害したといえるには、その写真のデッドコピーでない限り、

他の写真がそれを『真似をした」といえるものでなければなりません。

すなわちオリジナルの写真を認識して、それに似せようとしたという意図のようなものが必要で、

たまたま誰かの写真と同じような写真ができたというのでは

著作権侵害にはなりません。

今回の山川さんの写真は、肉の焼いている写真を撮影していたとき、たまたま別のカメラマンが

同じ被写体の撮影をしていたわけであって、そのカメラマンの作品の著作権を

侵害したことにはならないといえます。」

 

鈴木は今度こそほっとしたように、
「じゃあ、うちの写真は山川さんの撮影したもので、アールデザインの写真とは関係ないと

言ってやっていいのですね。」

 

大崎は、
「このケースの場合は、おそらくその主張で大丈夫でしょう。

これを前提に反論の回答書を作成しましょう。その上で何かありましたら、対応を考えますので。」
と申し述べた。

 

鈴木は「先生、よろしくお願いします。」

 大崎は早速、アールデザインの代理人弁護士宛に反論の書面を、

写真の相違点の指摘とともに送付した。

 

 その後、大崎のもとへ、相手方からは何もいってこなかった。

 

 鈴木は回答書を送付してもらってから1週間に1回くらいは、大崎にどうなっているかの問い合わせを

行っていたが、大崎からは「特に何もいってきてませんよ」との返事の繰り返しだった。

 

****************************************

 

最初の相談から3か月位たった。

大崎に「これくらい何もいってこなければ、おそらく写真の件については諦めたのでしょう」

と言われたこともあって、

鈴木は「やれやれ、わしもこれで安心できるな」ということになった。

 

 以上が、焼き肉写真騒動の顛末である。

 

                                  (了・・・ただし解説で補足します。)

 カテゴリー : 一般

小説「写真は誰のもの?」(その2)

(その1より)

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(・・・明日か。午後3時からならなんとか空いているな。)

 大崎は日誌を見ながら、調整可能な日時を切り出した。

 「鈴木さん、私も写真の載ったチラシを見たいなあ。

 ・・・じゃあ明日の午後3時はいかがでしょうか。
 その日にチラシと写真データも持ってきて頂けるとありがたいのですが。
 また、そのデザイナー事務所の関係者、えっと河合さん?は呼ぶことができませんか。」

 

「ええ、河合さんは、自分が無理なら担当者だった山川のどちらかがいつでも事情を

説明にうかがうと言ってます。」

 

「じゃあ、そのときに河合さんか山川さんも都合がつくかも調整して頂いて、

ご同行頂けるなら、ありがたいです。」

 

「分かりました。では先生、明日の午後3時にうかがいます。」

 

 電話を切ってから大崎は,どんなチラシだったのだろうか、とか、肉の写真はどこで入手したもの

だったのだろうか、などとデスクの前の椅子に座ったまま、ただ考えをめぐらしていた。

 

 翌日、応接室に通された鈴木は、大崎が入室すると、まるで久しぶりに飼い主にあった犬のように、

大崎へチラシを見せながら、

 

「この真ん中の肉の写真が違法だと言うんです。」
と切り出した。

 

 チラシには、おいしそうなステーキの写真が中央にあり、上側部分に

『○月○日開店!パクパクペッパー』

とのポップ文字が入ったものであった。

 

 鈴木は、
「このチラシと同じ写真を前面に出したホームページを立ち上げてまして、

これも公開しているんです。

あ、店の名前は会社名をアレンジして『パクパクペッパー』としました。

・・・そしてこれが弁護士からの通知書です。」

 

 大崎は、矢継ぎ早に資料を机の上においてしゃべる鈴木に面食らいながらも,

「まあまあ、鈴木さん落ち着いて。そちらの方も紹介して下さいよ。」

と鈴木の横に立っている男性の紹介を求めた。

 

 鈴木は、
「この写真ですが、昨日電話で言ったように,デザイン事務所に『美味しそうな肉の写真を

どーんと載せてくれ』と頼んだのですが、担当者の山川さんがこの写真データを収集して

チラシにレイアウトしたと聞いたので、山川さんに来てもらったわけです。」
と言い、さらに続けた。

 

「元々河合さんのデザイン事務所は、サラリーマン時代の同僚から紹介してもらったことが

きっかけだったんです。」

 

「山川」と紹介されたその男性が、大崎に名刺を渡しながら
「どうも、今回は思いがけない形でニクニクペッパーさんにご迷惑をお掛けしたみたいで。」
とお辞儀をした。

 

 名刺交換を済ませ大崎は、鈴木と山川に椅子へ座るよう勧めたあと、弁護士からの通知書に

目を通しはじめた。

「なになに・・・。要するに『貴社の配布したチラシに掲載されている写真ですが、この写真は

当社の従業員である岩田某が撮影したものであり、これを貴社のチラシに許可なく掲載したものです。

よって、かかる写真が含まれているチラシの廃棄、ホームページでの写真の掲載中止、及びこれを

配布したことによる損害賠償を求めます。』ということですか・・・。」

山川は、内容証明郵便とは別に送付されてきたという、写真が掲載されていたパンフレットを

さらに取り出した。

 

パンフレットには「ギュウジュウハウスのご案内」とタイトルが入っており、ページをめくると、

表紙裏には大きく肉の焼かれている写真が飛び込んできた。

「このパンフレットの写真が、うちの写真とよく似ているというのです。」

 

 大崎は山川に
「このパンフの写真と、どの写真が同じだといわれているのですか。山川さんこの写真はどこで

入手したものなのですか」
と質問した。

 

 山川はまずチラシの背景になっている写真を示し、「これです」と答えた。
「この写真は、私が知り合いの焼き肉チェーン店で撮影したものがもとになってます。」 

 

「その、知り合いの焼き肉チェーンというのは・・・」
 大崎がさらに尋ねると、山川は、すぐさま答えた。

「実は、この『ギュウジュウハウス』なんです。

うちのボスから『許可は取っておいたから撮影に行ってこい』

といわれて、焼いているステーキの写真を撮らせてもらったのです。」

 

「そうすると、ギュウジュウハウスの肉の写真だけれども、内容証明郵便に書いてあるように

「アールデザイン株式会社」が撮影した訳ではないということですね。」

 

「はい、ただ撮影に行った日に、同じ店に別のデザイン会社の担当者も来ておりました。

同じステーキの写真をそこで撮影していました。

それがこのデザイン会社だったのかもしれません。」

 

 大崎は、
「そうすると、同じステーキを、同じ日にそのデザイン会社の担当者が

撮影していたということなんですかね。」

とさらに突っ込んだ。

 

 山川は、
「ちょっと待ってください。手帳を・・・。」
といいながら背広の内ポケットから手帳を取り出した。

 

「あっそうですね。この日にお店へ行ってます。」

 

 ・・・大崎はちょっと黙って天井を見上げた。そして考えを整理するかのように、

山川に再度質問した。

 

「山川さん、ところであなたが撮った写真の元データはお持ちな訳ですね。

ほかに何枚かとられたのですね。」

 

「はい、当然持っています。ほかのデータと一緒です。中にはステーキだけでなく、

焼いているシェフの姿も撮影したものもありますが、そちらはホームページに使っておりません。」

 

「ところで、ステーキの写真撮影の許可は、もらってましたよね。」

 

「ええ、現場で特に許可を得るというようなことはありませんでしたが、ボスからは許可をもらったと

言われていました。

また、私が撮影しているときに、焼いている店のシェフから撮影していることは

知っておられたと思います。

そのときは何も言われませんでしたよ。」

 

「河合さんはどういう許可をもらったとおっしゃってましたか。」

 

「そこなんですがが、ボスに聞くと『マーケティングの資料にしたい』とギュウジュウハウスの

オーナーにお願いしたらしいのですが、キチンとした形で申し出たわけではなかったようです。

・・・ボスは,ギュウジュウハウスのオーナーと飲み友達だということで、どうも飲み会の席で

  今度うちの写真が行くからよろしく、といったような感じです。」

山川の口調には、ややボスの河合を批判するようなニュアンスであった。

 

大崎は
「山川さんが撮影された写真は持ってこられてますか。」
となおも尋ねた。

 

「ホームページに用いた写真は持ってきました。・・・これです。

私のパソコンの専用フォルダに

保管してありますので、それをプリントアウトしました。」

といって山川は手持ちのノートパソコンを開き、「パクパクペッパー」の

サイトを立ち上げた。

 

そして、肉が焼かれている写真が、手元にプリントアウトした写真と

見比べられるように、

テーブルを挟んで座っている大崎にも両者が見えるようにこれを示した。

 

 

 確かに、ホームページの写真は肉が焼かれているのがおいしそうに写っているが、

紙に印刷してきたものはパソコンのデスクトップよりはややくすんで見えた。

                                                   (続く)

 カテゴリー : 一般

小説「写真は誰のもの?」(その1)

以前、友人の弁理士さんと、知的財産その他に関しての弁護士と弁理士の

融合した事例についてのアドバイスをする書籍を書いてみようということになり、

まずは、小説仕立ての設例を作ってみることにした。

 

まだ、書籍として本格的なものにはほど遠いが、著作権侵害との関係で

それらしきものができたので、3回程度に分けて,ここに掲載してみる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 その日、帰り支度をしていた大崎の事務所の電話が突然鳴った。

 

 弁護士の大崎は個人の顧客からの相談が多く、離婚や借金の相談、果ては単なる

悩み事としか言えないような相談まで舞い込んでくる。

 そのような状況で多忙な毎日を送る大崎であったが、その日は夕方までの仕事がうまく

片付き、珍しく早く帰れるな、等と思っていたところに、見慣れない電話番号からのコール

であった。

 その電話は、昔、離婚の相談に乗ってあげたことのあった鈴木氏からのものであった。

 鈴木氏は、元々サラリーマンをしていたが、一念発起して以前からの夢であったステーキ屋を

開業するために、会社勤めのために開業資金を貯め続けて、やっとお店がもてる程の資金が

貯まったということで、5年前に大阪の肉料理屋の従業員として転職し、そこでの修行後、

現在、「ニクニクペッパー株式会社」という会社を立ち上げ、関西地域でステーキの新規出店を

検討している、ということであった。

 

「先生、その節はお世話になりました。実は、今度、うちで立ち上げたステーキハウスのことで

相談があるのですが」

 

「アア、鈴木さんですか。ご無沙汰しています。その後は独身貴族を謳歌されているんでしょ、

良いですねえ(笑い)」

 

「いやあ、そろそろ年も年ですし再婚したいと思ってるんですよ。

 それはともかく、今度会社を立ち上げて、ステーキハウスを開くことになりまして…。」

 

「それはそれは・・・確か、以前は運送会社にお勤めでしたね。

よく独立して会社をおこす気になりましたね。」

 

「いつまでもサラリーマンというのも先が見えてきましてね。ちょうど子供の養育費の支払いも

なくなりましたし、ここらで一旗揚げようと、がむしゃらに働いたことで資金も貯まりましたので

思い切って店をやってみようと思ったのです。」

 

「なるほど、起業は男のロマンですか。」

 

「以前から飲食店をやりたいと思っていたのです。それでやはり男はステーキじゃないかと(笑)」

 

「ステーキだけにステキですね」

 

「(笑)、ところでちょっと一つ問題が起こりまして」

 

「どういったことでしょうか?」

 

「著作権違反の問題が出たのです。」

 

「というと?店の出店がなぜ著作権と関係するのですか。」

 

「いやそれが、実は、出店場所も決まって、内装工事もほぼ終わり来週には開店予定なんですが、

集客のためにチラシを作ろうと思いましてね。とあるデザイナー事務所にチラシ作成を頼んだんです。」

 

「ふむ、それで?」

 

「チラシには店舗の写真の他、どーんと肉の焼けている写真が欲しいと思ったのですが、

そこのデザイナー事務所さんが、『肉の写真は任せて下さい』と言ったので、おまかせすることとし、

チラシのサンプルを作成して持ってきました。
 私はなかなかデザインが良かったし、写真も気に入ったのでこれを直ちに印刷に回し、来週の開店に向けて、

先月梅田の繁華街でチラシを配ったのです。」

 

「チラシも配って、評判も上々なら問題ないじゃないですか。」

 

「私も最初そう思っていたのです。ところがチラシを配り始めて1週間後に、突然、弁護士名で

何かチラシの配布をやめろ、損害賠償しろ、という通知書が届きましてね!

・・・よく読むと、肉の写真が著作権違反じゃないかなどと書かれてまして、びっくりしたのです。」

 

「デザイナー事務所には連絡しましたか?」

 

「ええ、もちろん。

 そこの事務所の代表が河合さんというのですが、彼に直接連絡をしましたところ、

『いや、アレはうちの社員の山川が写真の担当だったので、そいつに任せたところ、

写真データを持ってきたので、チラシにレイアウトするようにした。』というのです。」

 

「なるほど、そうするとその写真がどこで撮影されたものかと言ったことは,

 鈴木さんは直接知らないんですね?・・・どちらにしても、そのチラシを見てみたいなあ。」

 

「先生、通知書には『○○月○○日までに回答がなければ、法的手段に訴える。』と書いてありますので、

何とか近いうちにまでにご相談に伺えませんか。」

 

 なんだか最初の陽気な声から、鈴木氏の声は今にも泣きそうな声に変わっていた。

 

 大崎は「確か以前に離婚の相談を受けた時もこんな感じだったな」

などと思い出しながらも、少しかわいそうな気になってきた。

                                                    (続 く)

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