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矢沢永吉パチンコ肖像事件(パブリシティ権の判例7)

本件は、パチンコ機械の盤面の液晶に、矢沢永吉(X)に似た人物絵(本件人物絵)が表示されることに対して、自分を想起させるとして、
パブリシティ権の侵害を理由に、当該パチンコ機の製造会社及びパチンコ店経営会社ら(以上Y)を相手に、その人物絵の差止めと
謝罪広告の掲載を求めたものである。

これに対し、裁判所(東京地裁H17.6.14)は、Xの請求を棄却した。
まず、裁判所はパブリシティ権の侵害の判断基準として、

「実際に生じうる個人の同一性に関する情報の使用の態様は千差万別であるから、権利侵害の成否及びその救済方法の検討にあたっては、
人格権の支配権たる性格を過度に強調することなく、表現の自由や経済活動の自由などの対立利益をも考慮した個別的利益香料が不可欠
であり、使用された個人の同一性に関する情報の内容・性質、使用目的、使用態様、これにより個人に与える損害の程度等を総合的に
勘案して判断する必要がある」

といい、本件では、

「本件パチンコ機の内容、その中における本件人物絵の位置づけ及び使用の態様などからすると、Y(=被告。以下単にY)は
X(=原告。以下単にX)の顧客吸引力を用いる目的で本件パチンコ機に本件人物絵を使用したものとは認められず、また、現実にも
Xの顧客吸引力の潜用あるいはその毀損が生じているとは認めがたい。」

とした。さらに、

 「人格的利益についても、本件においては、肖像権の対象となるようなXの容姿の写真、ビデオあるいは詳細な写実画が使用されたものでは
なく、使用された漫画絵である本件人物絵は、その制作にあたって原告の肖像のイメージはあったにせよ、Xとの類似性はそれほど高くなく、
またことさら醜悪あるいは滑稽に描かれておらず、さらにパチンコ遊戯中の識別可能性に乏しいものであり、Yにおいても積極的に本件人物絵
をパチンコ情報誌等に提供しているものではないことからすると、Xに対して法的な救済を必要とする人格的利益の侵害が生じているとは
認められない。」

として、Xに対するパブリシティ権等の侵害が生じていることを否定した。

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矢沢永吉の事件としては、「そっくりさん」相手に訴訟を提起した事件が有名だが、本件で矢沢永吉の怒りに触れたのは、パチンコ機の
液晶に表示される人物絵だった。
一般にパブリシティ権の事件は、著名人を撮影した写真やこれを表示する氏名(肖像等)が対象となる。その上でその肖像等がどのような
使われ方をしたか(侵害態様)が争われる。
したがって、当該肖像等がどのような使われ方をしたかが問題であっても、当該肖像がその著名人を表示するのかどうかについては
通常争われることは少ない。
ところが本件では、問題とされた人物絵がXを表示したかどうか(あるいは本件人物絵がどれだけ矢沢永吉と類似しているか=ここでは
「侵害対象」と呼ぶ)がそもそも問題となったものである。その点で通常のパブリシティ権の事件とは異質といえる。
本判決は、この点を意識せずに並列的に指摘をした上で、パブリシティ権の侵害を否定したものであるが、まずは侵害対象か否かを
切り離して判断してもよかったのではないか。
すなわち、本件人物絵がXを表象したものとは言えないのであれば、Xのパブリシティ侵害が問題となる余地はないのであって、それで判断としては足りるのではないだろうか。

これに対し、本判決がそのような手法をとらなかったのは、パブリシティ権の保護の基準はもとよりその権利性自体も確立していたわけでは
ないところ、単に本件人物絵の絵柄の類似性のみでの判断では説得的ではないと考えたからであろうか。

今後、パブリシティ権の権利性とその内容が確立することで、その成立要件もより精緻に分析されるものと思われる。

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